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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第68章 仲間と共に


うつ伏せに倒れる義勇。
右腕が肘上で切断されている。

意識はないが、僅かに息をしているようだった。



「………嘘…、だろ」

光希は義勇のそばにふらふらと近寄る。


側に座り、身体と繋がっていない義勇の右腕に触れる。まだ少し、温かい。


「……なんで、これ離れてんの。利き手じゃん」


彼女の目に涙が浮かぶ。


「俺の近くに居たから?俺と一番派手に共闘してたから?離れて戦えばよかったの? ねえ、もしかして、ふっ飛ばされる時、俺を……庇った?」


返事はない。



この手で何度も頭を撫でてもらった。
数え切れない程、助けてもらった。
辛いときも、嬉しいときも、いつも側で支えてくれた。

『よく頑張った』
『ゆっくり休め』
『大丈夫だ、側にいてやる』

表情や言葉こそ乏しいものの、義勇のこの手はどんな時でも暖かかった。

光希は大好きなその手を、涙で歪む世界の中で見つめる。



彼の右手は力を無くし、カランと小さな音を立てて刀が地に落ちた。切断されてなお、この時まで刀を握ったままになっていた。

刀が、月明かりを浴びてぼんやりと光る。



「…………師範…」


『泣くなっ!!!』

声が聞こえる。


『しっかりしろ!お前は誰だ!』

また、聞こえる。


「………くっ、……っ、……はいっ!!」


二人の師から、そう言われた気がした。
歯を食いしばり、光希は立ち上がる。



「愈史郎!義勇さんの手当も頼むっ」
「わかってる!行け!!」
「ああ!!」


光希は走り出す。

涙を拭いた目の端で、伊之助と善逸の生存を確認する。伊黒と不死川、カナヲに関しては居場所すらわからない。


………今、戦ってるのは炭治郎だ。間違いない


拭ったはずの涙がまたこみ上げる。


………ヒノカミ神楽と逆転の呼吸。この二つが同時期に出現するのは、今だけなのかもしれない。 今しかないんだ!泣くなっ!泣くな……っ!!



「もう!二人とも厳しいことばっかり言う!俺の師匠はどっちも厳し過ぎなんだよ!ちっくしょおおお!!!!」


光希は乱暴に涙を拭いて、そう叫びながら炭治郎の元へと走る。



「善逸!伊之助!俺、ちょっと行ってくるわ!絶対に死ぬなよ!!」


二人に声だけかけて、光希は去っていった。


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