第68章 仲間と共に
「カナヲ、今、全力で刀……振れるか?」
「え?」
「俺と刀を合わせてくれ。一度戦線を離脱した者は、何か土産を持って帰らなきゃいけない」
光希がスラリと刀を抜く。
意味がわかったのか、カナヲも刀を抜く。
「いいか?」
「うん!」
二人は叫び声を上げて気合を入れ、本気で刀を振り、刃を合わせた。
ガキィィィン……と音がして、二人の刀身が赫く変化する。
「よっしゃ!!やっぱり!!」
「出来た!」
光希とカナヲに笑みが溢れる。
刀を当てる相手として光希はカナヲを選んだ。カナヲしかいないと思っていた。だから、先程カナヲを指名した。
力が同じくらいであること。
それだけじゃない。
光希の唯一の女友達であるカナヲ。共に鍛錬し、時に慰めあい、恋愛の相談なんかも出来る、かけがえのない親友だ。
「……カナヲ、ありがとう」
「うん、光希」
「大好きだよ」
「うんっ、私も!」
完全に蚊帳の外となった善逸。
少しの寂しさを覚えていると、不意に光希が振り向く。
「善逸、顔バッキバキ」
光希は笑ってそう言った。
つられて善逸も少し笑う。
ちゃんと自分のことも気にかけてくれている。そんな彼女に感謝する。
「本当だよ。男前が台無しだぜ。戻んなかったらどうしよう」
「安心しろ、元々さほど男前ではない」
「おいこら」
「……格好よかったよ」
「惚れ直した?」
「ああ!惚れ直した!!」
珍しくそんなことを言う光希。
善逸は照れくさそうにへへっと笑った。
「さあ、二人はまた姿を消すんだ。隙をみて薬もらって打ってくれ。伊之助にも伝えて」
「お前も姿を消せ」
「駄目だ、俺は戦場に居なきゃいけない。士気上げ、囮、司令、やることいっぱいあんだよ」
「でも……」
「伊之助と三人で、支援を頼む!」
そう言うと光希は赫刀を持って走り出す。
「カナヲ!女の子でも闘えるってこと、野郎共に見せてやろうぜ!」
「うん!見せてやる!」
「あはは!」
カナヲはふわりと姿を消す。
善逸も額に紙を当てる。
………女子たちに負けてらんねえ!
決意を新たに、再び戦場へと駆け出す。