第68章 仲間と共に
善逸は炭治郎を治療している愈史郎と村田を見つける。
「あ!あの、光希が!無惨の毒で!」
愈史郎が指示をして、近くの隊士が注射を一本出す。
「それ持ってとっとといけ。どこでもいいからぶっさせ。勝手に注入される。お前らは後だ。かすり傷みたいだからな」
「た、炭治郎は?」
「見てわからないのか、治療中だ。光希と竈門炭治郎、どちらかが欠けては意味がない」
「え……?」
「古の呼吸、聞いたことがある。無惨を倒すための人間側の切り札だ。だが日の呼吸と共に使わなきゃならない」
「そうなんだ……」
善逸は血清をもって光希のところに走る。
ぐったりとする彼女に眉を顰める。
「光希、腕に打つぞ」
善逸は光希の袖を捲る。それとなく痣を確認するが、痣はない。
「ぜぇ…ぜぇ…、一本?お前らの…分は……?」
「俺たちは後でいい。まだ大丈夫だ」
「………、じゃ、俺は半分でいいから、カナヲに……半分……」
「何言ってるの光希!」
「カナヲは、俺より小さい……毒の周りが、速い…から……」
「……善逸、構わず光希に打って」
「ああ」
「おい……、ちょっと……」
「光希、黙って。あなたはもっと自分の立場を考えなさい」
「カナヲ……」
善逸が光希の腕に血清を打つ。
「柱の人たちが、あなたをあんなに庇ったのはなぜ?戦況が不利になるのにも関わらずあなたを撤退させたのは?……あなたを失うわけにはいかないの。絶対に。それだけ如月光希の存在は大きいのよ。いい加減わかってよ」
珍しく沢山喋るカナヲ。顔はきりっとしている。
「私たちも、必ず薬打つから。安心して」
「カナヲ……、ごめん」
光希の身体がスッと楽になる。
「二人とも、ありがとう」
光希はゆっくり立ち上がる。
「おい、まだ……!」
「いやこれ、驚くほどの即効性だ。怖えくらいだ」
多少のふらつきはあるものの、確かに吐血も止まり、立てている。
戦場からはズガァァァンと派手な音がしている。
「戻らなきゃ。もう誰も死なせたくない」
光希が唇を噛みしめる。
カナヲもぐっと拳を握る。
二人の頭にしのぶの笑顔がよぎった。
善逸はそんな二人を見つめていた。