第68章 仲間と共に
光希を抱きしめた時、彼女への愛しさと、その小さな身体の儚さに、善逸は涙を零していた。
『戦闘中に泣くな!』
そう言って怒られると思ったから、姿が見えないのをいいことに……こっそりと。
本当は、彼女をずっと大切に己の手の中に入れておきたい。傷付けないように、そっと。……でもそれは無理だ。
彼女がそれを望まない。無理矢理にでもこじ開けて出ていってしまう。
でも、そんな彼女だから好きになった。
たまらなく愛しく思うのだ。
善逸は、大地を蹴って戦場へ向かう。
彼は戦闘を好まない。自分が傷付くのも嫌だし、相手を傷付けるのも嫌だ。
それでも剣を振るう。彼女を守るため。彼女が守りたいと思う者を守るため。
………泣くな!俺も繋ぐんだ!皆が繋いだものを…光希が繋いだものを!繋げ!夜明けまで!!
善逸は涙を拭く。
伊之助とカナヲに合流し、柱の支援に回る。
背後から光希の声が聞こえる。
「息のある者、奮い立て!まだ策はある!諦めるな!!」
隊士を鼓舞する力強い声だ。
腕に薄紫色の腕章を付けた隊士が光希に駆け寄る。光希は何やら指示を出している。
………全くもう。少しは大人しくしててくれよ、頼むからさぁ
善逸はそれを横目で見ながら、無理だとわかってる願いを心の中で呟いた。