第68章 仲間と共に
しかし、その頼みの炭治郎が倒れた。
炭治郎は無惨討伐の希望であり、もちろんそれ以上に光希の中ではかけがえのない大きな存在である。
死亡が確認された訳ではないが、とてつもない不安が光希を取り巻く。
………炭治郎、炭治郎、どうか無事でいてくれ
そして、同時に弱気な想いが頭をよぎる。
………これ、俺が行ったところで、何か出来るのだろうか。一瞬でやられて終わりならまだいいけど、もし足を引っ張りでもしたら……
柱が集中攻撃をしていてこの様だ。
眉を寄せて光希が俯く。勝つための手段が思い浮かばない。
「光希、お前はそんなに弱虫なのか」
道案内をする鴉が、光希を見ないままに声をかける。
「お前の入隊以来、俺はずっとお前を見てきたが、どんな時でも強気に策を練っていた。俺はそんなお前に付けることを誇りに思っていた」
「善治郎……」
「お前の特技は、その小賢しい脳みそだ。思考を止めずに常に前を向くと誓ったのだろう、師の墓前に。今もお前の背中で睨みをきかせているぞ」
「………そうだったね」
「俺は鴉だ。虫なら食うぞ」
「ごめん、………ありがと」
光希は顔を上げる。
………何やってんだ俺。このまま死んだらあの世で師範に合わせる顔がない。どうせ死ぬなら、ちゃんと役に立って死ね!!!
「そろそろだ!気合い入れろ!!」
「うん!」
街が見えてきた。
「梶山さん!ここまででいいよ!」
「いや、まだ……」
「これ以上は危険だ。停めて」
男は光希の言う通りに車を停めた。
「あのね、この先に鬼の大将がいるんだ。だから、絶対に近付かないで。興味本位で来ないでくれ。……死ぬよ」
光希は真顔で男にそう伝える。
「あ、ああ」
「すぐにここから離れるんだ。約束だよ」
「おう」
「これ、御礼」
そう言って、光希は男に札束を渡して車から飛び降りる。
「え!要らんよ、こんなの!すっげえ大金じゃねえか!おい!」
「受け取って!恩に着る!!すぐに引き返すんだよ!元気でね!!」
そのまま光希は夜の街へと駆けていく。
「命の恩人に、恩に着られちまったよ……」
男はそう呟くと、すぐに車を反転させ、元来た道を引き返していった。