第68章 仲間と共に
「ごめんね、梶山さん。夜中に呼び出して」
「いいんだよっ!光希ちゃんは命の恩人だからなっ!」
「ありがとう。本当に助かるよ」
闇の中を高速走行する一台の車。
「田んぼに落ちないでね」
「ははは、大丈夫だよ。飛ばしてるから、ちゃんと捕まってくれよ!酔わないようにな」
「うん!」
何度か乗せてもらっているが、光希は高確率で酔う。窓を開けて風を入れ、三半規管を守る。
「田んぼを越えたら左だ!」
「おう!」
鴉が喋ることも知っている。
案内は鴉に任せて、光希は“眼”に集中する。
無惨との戦いは熾烈を極めている。
無惨に切りかかっていっていき、間合いに入り込みすぎた柱たち。絶体絶命のピンチに動く数人の小隊長。己と率いている隊士を鼓舞し、彼らは自己判断で無惨の前に飛び出した。肉の壁となって、身を呈して最高戦力である柱を守った。
唇を噛みしめる光希。
………死なせるために稽古をしたんじゃない!
でも、彼らの判断は間違いとも言い切れない。目的の為ならなんでもしろ、迷うな、悩むな、と伝えてきたのは自分だ。
柱を残すのは無惨討伐の最低条件だ。
光希は一切の躊躇なく無惨の前に飛び出した彼らの勇気を、心から尊敬した。
そこへ悲鳴嶼と不死川が参戦する。
無惨を相手に、柱五人。
それでも攻略の糸口すら見つけられない。
……嘘だろ、これは予想以上だ。もはや異次元だ
炭治郎も吐血して倒れる。炭治郎のヒノカミ神楽がなくなってしまっては、光希が描いた勝利への道筋は絶たれる。
炎とは共闘できない光希だが、ヒノカミ神楽には『逆転の呼吸』を乗せることが出来た。
いや出来たどころではなく、『逆転』はヒノカミ神楽を強化するための呼吸なのではないかと思うほどに技を乗せやすく、そしてとんでもなく強化されたのだ。
今まで合わせてきたどの呼吸よりも、炭治郎の技の速度と威力が上げることができた。桁違いだった。
炭治郎が柱稽古をしている時、伊黒邸で共闘を試したのだが、危うく道場を壊滅させてしまうところとなり、「壊すなら冨岡の所でやれ!」と怒られた。
光希と炭治郎は、二人で伊黒にめちゃくちゃ謝り倒すこととなった。