第67章 知以滅殺
光希は廊下に出て隠に声を掛ける。
「白湯を一杯頼む」
運ばれてきた白湯を少しずつ胃に流し込む。
飲み終わると、開戦後に初めて光希はゆっくりと息を吐き、目を閉じた。
もう一度目を開いた時、光希は剣士に戻った。腰の刀をぐっと握る。
「無惨を地上へ排出しました!ですが場所は…市街地です!!」
「想定の場所から大きくずれています!」
「夜明けまでの時間は?!」
「あと…一時間半です……!!」
「何処だ?」
光希が場所を確認する。
「かなり遠いぞ、光希」
「問題ないよ、天元さん」
「さん……?お前、」
「こんな距離余裕だわ。俺を誰だと思ってんの」
光希は悪い笑みを浮かべた。その顔に、宇髄は可能性を一つ思い浮かべる。
言葉も戻し、完全にいつもの光希だ。
輝利哉の前に膝をついて、礼を取る。
「お館様、総司令官如月光希、これより先は現場での陣頭指揮を取りたく存じます。行ってまいります。腹心の宇髄を置いていきますのでご安心を。彼は俺より賢いです」
「光希……」
「今までありがとうございました」
「……こちらこそ。沢山のご教授をありがとうございました。……先生」
光希はゆるやかに笑って立ち上がった。
輝利哉は泣かないように机に目を戻して、また戦況に集中した。
かなたとくいなとも、光希は目を合わせて頷く。