第67章 知以滅殺
ついに無惨と炭治郎と義勇が会遇した。
宿敵を前に、大切な人たちが脳内に浮かんで怒りが爆発しそうになった炭治郎を、隣の義勇が落ち着けと宥める。
しかし、その言葉は正に義勇自身にかけられた言葉だった。彼も怒りで頭が沸騰しそうになっている。
年少の炭治郎が隣にいたから紡げた言葉だろう。一人だったら切りかかってしまったかもしれない。
「至急!救援を!柱を集結させろ!!」
輝利哉が叫んだ。
その時、愈史郎が上弦の肆・鳴女の頭を乗っ取った。光希は炭治郎たちを見つつ、愈史郎の動きを注視する。
戦いと同時進行で見ていく。
無惨の攻撃が炭治郎の右目をかすめた。
「……っ!」
光希が息をのむ。
「炭治郎……踏ん張れ……、お前がやられたらっ……」
そこまで口にして、はっと口を押さえる。
しまった、不安を煽ることを口から出してはいけない。ぐっ……と言葉を飲み込む。
自分の精神状態も限界にきていると光希は思う。
『負けるな』
彼女の状態をいち早く察した宇髄が、メモ用紙を奪ってそう書いた。
宇髄の優しさに光希の目に涙が浮かんだ。輝利哉たちに気付かれないように速やかに涙を拭いて、唇をかみしめる。
『多謝』
光希は素直に感謝を綴った。
甘露寺、伊黒が戦いに合流する。
四人が無残を相手に奮戦する。既に劣勢。戦闘続きの炭治郎と義勇はボロボロだ。
そこへ愈史郎の叫び声。
愛する人を殺された猛烈な怒りを纏い、悔しさと悲しさを己の指先に全て打ち込む。
「今からお前を、地上へ叩き出してやる!!」
その声が聞こえた光希。
………来た!!!
「愈史郎!!頑張れ!!」
突然叫ぶ光希に輝利哉が驚く。
え、応援するのは炭治郎たちの方だろ?そっちっ?!といった顔だ。
振り返って顔を見てみると、彼女の顔付きはさっきまでと全く変わっていた。
いや、変わっていたというより……戻っていたのだ。いつもの彼女に。
光希は隣に置いていた桑島法子の刀を持つ。
鞘を握りしめ、「一緒に来てください」と囁きかける。傍らの箱に手を伸ばし、紐を出して背中に刀を背負う。
「え……光希、何を?」
輝利哉が光希に聞く。