第67章 知以滅殺
光希の祈りに応えるように、炭治郎と義勇は猗窩座に勝利した。
最後は不自然な形で猗窩座の身体が消えていった。何が起きたのか、詳細はわからない。
しかし、今生きてそこにある炭治郎と義勇の命に感謝する。
廊下の煉獄槇寿郎に一言声をかける。
「討ち果たされたよ」
「ああ……」
廊下から啜り泣く声が聞こえた。
「炭治郎、義勇、上弦ノ参撃破!疲労困憊ニヨリ意識保テズ失神!!」
ホッとする間もなく、どんどんと戦況が動く。
「光希!伊之助がカナヲに合流した!」
「よし!」
「光希、時透と悲鳴嶼さんが無惨に近付いたぜ」
「いいぞ!そのまま誘導だ!」
光希はまた地図に目を落として全体を見ていく。
残りの手持ち勢力と相手の人数を、宇髄とやりとりしていたメモ用紙を側に寄せ、書き込んで計算していく。
書けなくなった鉛筆を投げ捨て、新たな鉛筆を持つ。もう五本目だ。
………カナヲ、伊之助、死ぬな!頼む、死なないでくれ!!
二人の共闘は見たことがない。よって、どうなるか想像が出来ない。お互いがどんな技を使うのかもよく知らないだろう。
しかし、二人ともしのぶが大好きである。だから、きっとしのぶが繋いでくれる。
光希は大局を動かしながら、大好きな友に意識を向ける。
カナヲと伊之助は童磨に苦戦する。
当然だ。上位の上弦、その強さを身を持って知っている光希。
祈りながら、周辺に指示を出していく。
「上弦の弐に、変化が起きました!」
「……よしっ!」
しのぶの体内毒が発動。
カナヲと伊之助がその魂を繋ぎ、見事に童磨を討ち果たした。
………でも
光希は眉を寄せる。
あの時童磨を倒せていれば………
どうしても、その考えがよぎる。
しのぶと義勇、カナヲにはどれだけ謝っても謝りきれない。
しかし、今それをすべきではないとわかっている。
「よくやった!報じろ!」
「シノブ!カナヲ!伊之助!!三名ニヨリ、上弦ノ弐撃破!撃破ァァ!!」
また沸き立つ城内。
大粒の涙をこぼしながら髪飾りを抱きしめるカナヲを、“眼”を通して静かに見つめる。
伊之助も母を想って泣きじゃくる。
「……頑張ったな、カナヲ、伊之助。偉いぞ」
光希は静かに呟いた。