第67章 知以滅殺
炭治郎と義勇は、猗窩座と死闘を繰り広げる。
一瞬でも気を抜いたら即死の戦いだ。
死闘中、義勇の左頬に痣が出現した。
「……っ、出た!!」
光希が声を上げる。
義勇の身体能力が跳ね上がる。しかしそれでも猗窩座にまで剣技が届かない。
「くそっ……」
義勇の寿命が最大あと四年と決まってしまった。なのに、それなのに。なんて残酷な力の差。
光希は悔しさに顔を歪める。
義勇は肩に深い傷を受け刀を折られた。炭治郎も血だらけなって、それでもまた立ち上がり二人は立ち向かう。
そんな中、義勇と同じく極限状態にある炭治郎に、変化が起こる。
髪の色と目の色、呼吸音、雰囲気……全てが変わり、義勇が炭治郎を見て驚いた表情をする。
……なんだ?なにが起きた?
鴉の“眼”では、何が起きているのか光希にはよくわからない。ただ、炭治郎の動きが異質なものへと変わったのだけはわかる。
そんな異常状態の炭治郎の刀が、猗窩座の首をはねた。
「……切った!………え?」
光希は声をあげるが、消えていかない猗窩座の身体。
そして、集中を切らした炭治郎が攻撃をくらい失神。炭治郎に迫る猗窩座。
………やめろ、やめてくれ!
光希の気配が、彼女の意思とは別に不安定に揺れる。一隊士の生死に、総司令官が一喜一憂してはならない。わかっている。
しかし、思わず腰が浮きそうになる。
宇髄がそれに気付いて、すぐさま光希の肩をぐっと押して留める。その力で己の状態に気付き、彼女は宇髄にごめんと視線を送る。
光希は黙って座り直す。
動けない炭治郎を守るため、大怪我の義勇が立ち上がって「炭治郎を殺したければ、まず俺を倒せ……!!」と叫んだ。
こんな義勇を見るのは初めてだ。
光希の心が奮い立つ。
ああ、やっぱり義勇さんは強いな、自分はとんでもない人に教えてもらってたんだなぁ、と思う。
………信じろ。負けない。この二人は絶対に負けない
光希は口を真一文字に結ぶ。