第66章 開戦
「………っ、おいっ!我妻っ!」
………誰?じいちゃん?……光希?
「どうだ?!助かりそうか?!」
村田の叫び声で善逸は夢から戻る。
「顔見知りなんだよ!なんとかしてくれよ!頼むからな!」
「うるさいだまれ村田。味噌っかすの分際で」
知らない誰かが、自分の治療をしてくれていることに気が付く。
村田が「キイィィィ」とブチ切れている。
………さっきのは、俺の願望が見せた幻か?
善逸はぼんやりと考える。
例えそうであったとしても。
こんな自分を誇りだと言ってくれた。
自分は自分のことを好きじゃないけれど、あの人がそう言ってくれるのなら、少しはマシに思えるかもしれない。
善逸は慈悟郎の言葉を、継ぎはぎだらけの幸せの箱にそっとしまった。
「……あのね、俺の箱、結構…中身入ってんだよ。凄いでしょ……、じいちゃん」
彼は涙でボロボロの顔で、小さく呟いた。
その後、愈史郎が「眼球が裂ける」「血が止まらない」「一年後だったら即死」など、不安要素満載の言葉を畳み掛けてきて、善逸は違う意味でえぐえぐと涙を流した。