第66章 開戦
上弦の陸、獪岳と対峙した善逸。
「アンタが鬼になったせいで、じいちゃんは腹を切って死んだ!!!」
桑島慈悟郎の死を伝えて激高する。
あの日以来封印していた涙が、ぐちゃぐちゃな思いと共に堰を切ったように滝の如く流れた。
「雷の呼吸の使い手から鬼を出したからだぞ!!!」
善逸の頭に修行時代が蘇る。
獪岳に散々罵倒されながらも、その強さを尊敬していた善逸。
慈悟郎にとっても、善逸にとっても、かけがえのない大切な人だった。
なのに…
なんでだよ……
目の前の兄弟子は、慈悟郎の死を嘲笑い、耄碌したクソ爺だと豪語した。
怒りで手が震える。
………こいつ、許さねえ。ぶっ殺してやる
善逸の胸の中は、燃えるような憤怒で埋め尽くされた。鬼、しかも上弦と相対しているのにも関わらず、いつものような恐怖は微塵もない。
「俺がカスならアンタはクズだ!!!」
獪岳の攻撃を高速で躱して、逆に斬りつけた善逸。
そのあまりの敏捷さに驚く獪岳。
「おせーんだよ、クズ」
これが本当にあの善逸なのか?
“眼”で見守る光希も冷や汗を流す。
―――怒りで能力がとんでもなくぶち上がってる。でも……善逸、駄目だ。冷静になれ
善逸と獪岳は高速で技を繰り出し合う。
獪岳の猛攻を受け、体のあちこちを刻まれる善逸。
しかし、善逸はどれだけ傷を受けても痛いとすら感じない。
心に思うことは、怒り。ただそれだけ。
怒りの剣を振るって獪岳の首を狙う。