第66章 開戦
輝利哉は妹たちと担当範囲を三分割し、三人で全体の状況を把握して確認し合う。
主に、柱や炭治郎たち個別遊撃隊の状況を注視して動かしていく。
一方光希は、一人で全体を見る。
輝利哉達が見ている戦況大枠も当然意識しつつ、更に自らが育てた小隊長達に、迅速かつ的確に伝達をしていく。状況に戸惑っている隊士を一人でも多く救えるように、隅々まで目を凝らして小隊に合流させていく。
広間ではなんの打ち合わせもなく、各々がすべきことをしている。
今まで何度も練習をしてきた。
状況設定を毎回変えて、嫌というほど繰り返した。これが初陣である彼らにとっては、その事実が支えだった。
『知以滅殺』
光希の刀に刻まれているその言葉を掲げて、この日この時の為に準備をしてきた。
しかし、準備など、簡単に超えられてしまう。
そんなことはわかってる。
剣技がどれだけ努力しても足りないのと同じだ。知略もどれだけ想定し尽くしたと思っていても、そこに費やした時間が全て無駄だったのかと思ってしまう程、いとも簡単に叩き潰される。
だからこそ、光希は『思考力』『判断力』を徹底的に鍛え上げた。
一手目が駄目なら二手、三手……
二番煎じを使わせず、新たな手を考えよと示し続けた。
かつて桑島法子が光希にそうしたように。
「小林!左手真ッ直ぐ行ッタ先ノ四人組ト合流セヨ!」
「斎藤!待機シナガラ隊ヲマトメ、小隊内ノ合言葉ヲ設定セヨ!」
「笹山!後方ノ隊士ヲ至急救援セヨ!」
光希の指示が、鴉を通じて無限城に飛び交う。
左腕に薄紫色の腕章をつけた隊長たちが大きく声をあげて城内を駆け回り、隊士を鼓舞し、指揮を取っていく。
精鋭兵である彼らは、湧いて出てくる鬼を軽く倒しながら無惨を探していく。