第66章 開戦
炭治郎は悲鳴嶼の修行を終え、冨岡邸に移動することにした。
出発前に岩の上で瞑想している善逸に声をかける。
「俺、次の訓練に行くんだけど…大丈夫か?善逸…ここ暫く喋らないから心配で……」
おろおろとする炭治郎。
善逸は、悪いと思いながらも背を向けたまま話す。今ここで彼に甘えるわけにはいかない。
「光希にも善逸を頼むって言われてるし、手紙でも頼まれてるんだ」
「光希が?」
「うん…、何かあったのか?俺にできることがあれば何でも……」
彼の優しさに心底感謝する。
「お前は本当にいい奴だよな。ありがとう」
それでもやはり、頼るわけにはいかない。
彼にもやるべきことがある。足を止めさせてはいけない。
「これは絶対に俺がやらなきゃ駄目なんだ」
振り向いて顔を見せたら余計に心配させてしまう。だから、親友だから、顔を見ないままで話した。
「わかった。善逸、無理するなよ」
「ああ。光希が言ってたことも、もう大丈夫だから。心配かけてごめんな」
ただならぬ善逸の雰囲気を気にしながらも、炭治郎は出発していった。
そして、炭治郎が義勇の家に行った日から、三日目の夜。
ついに決戦の刻を迎えた――――……