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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第65章 行かなきゃ


屋敷に向かって走る光希と宇髄。

「遅い。お前、疲れ過ぎ」
「………くそっ」
「行きに飛ばし過ぎたのと、泣き過ぎだ」
「わかってるよ」

「わかってるなら……」

宇髄は走る光希を横から抱える。


「わっ!」
「ほら、飛ばすぞ。しっかり掴まれ」
「……ごめん」
「もう逃げんなよ」

先程暴れて宇髄の腕から逃げたことを言っているようだ。

「あんたも逃してんじゃねえよ」

そう言いながら、落とされないように宇髄にしがみつく。

「すばしっこい猫なもんで」
「ははは」

光希は笑っているものの、明らかに元気がない。


善逸が心配なのと、もう一つ。

「ごめんなさい、天元さん」

「とりあえず戻ったらすぐに謝りに行くぞ」
「うん」

「俺も一緒に謝りに行くから」
「は?あんたは関係ねえだろ」
「付いてってやるよ」

「……いいのに。変なの」

光希は眠そうにする。

「眠いか?」
「……泣き疲れた」
「子どもか」
「大丈夫。寝ないよ。善逸以外の男の胸で寝るわけにはいかない」

「まあこの子は。なんか腹立つから落としてってやろうか」
「へへへ。やめてくれ」



無事に日暮れまでに屋敷に着いた。
宇髄に下ろしてもらい、お礼を言う。宇髄は全く息を切らしていない。

すぐに輝利哉の所に二人で行く。


「申し訳ございませんでした」

二人で頭を下げるも、輝利哉は全く怒っていなかった。

「どんな人なんだ?」
「え」
「光希の恋人」

なにやら面白そうにしている。

「端的にお伝えするならば、阿呆な男です」
「ちょっと、天元さんっ!あまりにも端的だからそれ!」

「阿呆なのか?意外だな」
「や、阿呆では、ない……と思います、よ?」
「圧倒的な自信のなさだね」
「ははは……」

光希は顔を引つらせる。


「でも、好きなのだろう?」
「あ……はい、……まあ」


………こ、これは恥ずかしい。盛大に怒られた方がマシだ


「……輝利哉様、立派な策士になられましたね。見事に意地悪です」
「光希の薫陶の賜物だ。こんなに動揺している光希は初めて見るよ」
「人の動揺に攻め込むのは常套策です」

「そうだね。さあ、詳しく聞かせてもらおうか」


光希がよく見せる悪魔のような笑顔で、輝利哉が笑った。

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