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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第65章 行かなきゃ


「……っ、うわぁぁぁぁ!!ごめん!!ごめんな、光希っ!!ごめん!!酷い事言って……ごめんなぁ……」


善逸に抱きしめられた光希は息が上がっていた。どうやら宇髄を振り切って戻ってきたようだ。


「いいっ!いいの。私のことは、いい…っ!」


光希も善逸を強く抱きしめる。


「私のことはいいから、今、善逸は…ただ慈悟郎様の死を…悼めばいいのっ…、辛いね、悲しいね……、ごめんねぇ、止められなくてごめんね、善逸……」


光希の目からもボロボロと涙が溢れる。


「……光希っ、ごめん…ね、……じいちゃん…、うっく、……じいちゃ…っ、うわぁぁぁん……」
「…っ、……うぇぇーん…、慈悟郎様ぁ……ごめんなさい……」


抱き合ったまま二人は泣きまくった。
こんなに涙があるのかと驚く程に泣いた。


一人で泣くのと、二人で一緒に泣くのとでは全然違う。

さっき一人で膝を抱えて泣いていたときは悲しみしかなかったが、体温を分け合いながらの今はそれだけではないものが心に生まれてきている。


「……光希」
「………、何」

泣きすぎてやや過呼吸気味の善逸が、ふわふわとした意識の中で光希に呼びかけた。


「あり、がと…、俺を、じいちゃ…、とこ、……連れてって……くれて」
「………うんっ」
「あの時、ちゃんと、お礼…言えたからっ……」


善逸はぐいっと涙を拭く。
呼吸は乱れているが、涙は落ち着いてきた。


「あれが、……最期になっちゃったけど、少しは恩返し出来たかもって、思えるよ……ありがとう」

「……うん、私もあの時慈悟郎様と会えて良かった」

光希も涙を拭く。



そこへ宇髄が現れる。

「……時間だ。光希」
「こんな状態の善逸を置いていけるわけない」

善逸をぎゅっと抱きしめて光希が言う。

「そろそろ夕方だ」
「……俺の優先順位は善逸が首位だ。いつも言ってるはずだ」
「駄目だ。行くぞ。俺はお前を守ると決めている。我儘もいい加減にしろ」
「…………」


善逸はこの時初めて光希が隊服を着ていないことに気が付いた。


彼女は隊務を放り出して走ってきた来たと宇髄は言った。そうでなければ、許されないことなのだろう。

彼女がかなり無理をしているのだとわかる。


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