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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第65章 行かなきゃ


二人が去り、一人残される善逸。
森の中は静かだった。


光希の羽織がなくなり、肩に冷たい風を感じた。羽織が外気から守ってくれていたのだと気が付く。

感覚が戻ってくると、さっき自分で傷付けた手が痛みだした。


………俺は、何やってんだ


善逸は痛む手を敢えてぎゅっと握る。
ズキンと痛みが走る。


………本当に、何やってんだ


側にあった岩に、ゴンッと頭をぶつける。
額が割れて血が出る。


………馬鹿にも程があるだろう


傷の痛みと心の痛みで、涙が出る。



「………うぅ……光希…、……光希っ!!」


善逸は泣きながら立ち上がり、山の中をキョロキョロとしながら走り出す。


………あいつが、苦しまないわけないだろう


泣きすぎて耳鳴りが酷く、聴力がうまく機能しない。


………お人好しで、真面目で、めっぽう優しいあいつが、そんな指示を出すわけない



善逸は涙を拭いて、目を凝らして必死に探す。

しかし、見付からない。宇髄に連れて行かれてしまったのだろうか。


こんな時、いつも善逸の気持ちの整理がつくまで、必ずどこかで待っていてくれた光希。

『頭の整理は出来たか?』

待つのは苦手だといながら、そう言って声をかけてくれた。

『お前の為なら、……俺はいくらでも待つよ』

光希の苦笑いを思い出す。


いてくれるのがあたりまえ、……そんなことは全くないのだと、大事な人を亡くしてようやく気付く。



「……っ、……光希…」 


善逸は、膝を付く。
うずくまって涙をこぼしていると、突然ふわりと抱きしめられた。


その瞬間、善逸は反射的に手を伸ばし、すがりつくように抱きしめた。


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