第64章 仲裁
不死川のその態度に、光希はため息をつく。
「とりあえず、炭治郎と実弥さんはしばらく接触禁止ね。不本意だけど」
「……おォ」
「善逸と玄弥も一度ここから離す。全員まとめて悲鳴嶼さんの所に送り込むよ」
「黄色頭もかよォ」
「ああ、あいつは炭治郎と一緒に行動させた方がいいんだ。ここで炭治郎が善逸に追いついてくれてよかった」
「あの黄色頭、何人かと一緒にここから逃げようとしてたぜェ」
「……!何人かと一緒に……?」
「ああ。ことごとく失敗してたけどなァ」
光希は何かを考えながら、笑みを浮かべた。
「……何、ニヤニヤしてんだ。気持ちわりいなァ」
「いや、ははは」
「??」
「……ちょっと、嬉しくてね」
不死川は訝しげに光希を見る。
光希はクスクスと笑っている。
……なんだ。ずっと一人ぼっちなのかと思ってたよ
逃げ出そうとすることは想定内だったが、仲間と共に逃げようとした事が嬉しかった。自分から誘ったのか誘われたのかはわからないけれど、かつての善逸からは考えられなかった。
……友だちが全然出来なかったお前が、誰かと一緒に悪いことできるようになったんだな
改めて、炭治郎と伊之助に感謝をした。
彼らが善逸に仲間とつるむことを教えてくれた。
……もう、俺がいなくても大丈夫だな
光希は、少し寂しそうに笑った。
「よし、じゃ俺からの話しはお終いです」
「おォ」
「屋敷の壊れた所を直して、明日からまた鍛錬お願いします」
「あァ」
不死川はバツの悪そうな顔をしている。
「……本当に素直じゃないですねぇ」
「るせェ」
「少しは悪かったって思ってるんでしょ?あいつら相当酷い怪我してますよ」
「………まあ」
「なら、俺がそれ炭治郎たちに伝えておきますから。実弥さんは弱虫だから言えないもんねー」
「……クソッ、殺すぞ」
「はいはい」
光希は立ち上がる。
「じゃあ俺、炭治郎たちに会ったら帰ります」
「……勝手にしろォ」
「お疲れ様でした」
「…………おぅ」
不死川からは反省の色が見えている。
玄弥とうまくやれない自分にもどかしさを感じているのがわかる。
「実弥さんは……優しいね」
光希は、ふふっと笑って部屋を出ていった。