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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第63章 恋慕


青年は光希を見ないまま、小さな声で聞く。

「なあ……、如月」
「なんだ?」
「お前、女だろ?」
「………ああ」

光希はこちらにも正直に答える。
答えなきゃいけないと思ったからだ。


「よかった……俺、男色なのかと思った」

青年は頑張って笑顔を作り、光希を見る。
光希も、少し困ったような笑顔をする。


「戦いが終わったら……、もう一度お前に告白していいか」
「ああ」
「金髪野郎、死んでるかもしれないし」
「おいっ!」
「ははは」

縁側で二人で笑う。


「俺も生きてるかわかんねえぞ」
「死なせない。如月は絶対に死なせない。俺が守る」
「……ありがと。でもお前も死んだら何も言いに来れねえからな。ちゃんと生き残って……玉砕しに来い」
「玉砕前提ね……」

青年は頭を掻く。


「言わせてくれて、ありがとな」
「どういたしまして」
「俺、お前を好きになってよかった」
「光栄だよ」

「これからも、よろしくな」
「ああ。俺の方こそ」


青年は笑っているが、立ち上がれないでいる。それを感じて、光希の方が彼から離れる。


「じゃあ、また三日後な」
「……ありがとう、如月」
「ああ。応えてやれなくて、……ごめん」
「いいんだ、わかってる」

青年は涙を隠すように俯く。


光希は屋根の上に飛んだ。


「見事だな」
「ふぅ……やっぱり心が痛いよ。辛い」

宇髄の隣に座る。
眉を寄せて、素直に辛いと口にする。


「仕方ねえ。ちゃんと断って関係性を持続させた。上出来だろう」
「まあな、俺を誰だと思ってるの」

光希は後ろ手をついて、空を見上げる。
昼過ぎの太陽が温かく彼女を包む。


「あいつ、男前だったのによ。振っちまってよかったのか」
「本当だな」
「一考の余地もねえのかよ」
「ねえな」

吹き抜ける風が二人の髪を揺らす。


道場の方からはいつも通り隊士たちの叫び声が聞こえる。

光希の耳ではその中にある善逸の声は聞き分けられないが、泣きながら絞られているであろう恋人を想う。

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