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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第63章 恋慕


「ごめん、お待たせ」

隊服に着替えた光希が部屋に現れる。
円座を組んでいた隊士たちが顔をあげる。


隙間を開けてもらい、座る。


「んじゃ、今日の戦いの分析するか」


光希の声掛けで、皆が話し始める。

ここでは敬語は禁止。
入隊歴や階級は関係なく、光希含めて皆が対等に扱われて全員が名字で呼び合う。

姿勢を正す必要もなく、皆足を崩している。


会議中、誰もメモを取らない。
話し合った作戦は、全て頭に叩きこむことになっている。


「合言葉、変えるぞ。『光』の『左』は単純過ぎたな。今回は大丈夫だったが、一度使ったこともあるから、変えよう。何かいいのあるか?」
「『ぱんけえき』」
「長えわ!」

軍議とはいえ、楽しい雰囲気である。


「……『愛してる』」
「おいおい、それ戦闘中に言えるか?突然愛を叫びだしたらやべえわ」

先程の男が妙なことを言い出して、光希は少しヒヤリとする。笑いにすり替えて誤魔化していく。


「具体的に決めずに、左を……例えば花の名前、右を生き物の名前とかにしたらどうだ?」
「いいな!妙案だ」

隊士からの提案も拾い上げていく。
次回の策を決めて、その場は解散となった。

隊長候補生も、それぞれ柱稽古をしている。次は三日後の伊黒邸で、蛇柱相手に共闘することに決まった。


「ふぅ……」

光希が部屋で一息ついて手ぬぐいを外す。
部屋に残っていた宇髄が腕を覗き込む。


「お疲れさん。あーあ、赤紫色だ」
「あんた好みの派手な色になってていいだろ?」
「脛は」
「うへぇ……軍議の時からいってえと思ってたけど、こっちも派手な色になってら」


ズボンをぺらりとめくると、右足のスネが赤く腫れている。


「やっと前の怪我が治ってきたのにな。お前も生傷が耐えないねえ」
「へへへ…、…………」
「…………」

ふと会話をやめる二人。光希は黙ってズボンを下ろして足を隠す。


庭から一つの気配。


「如月、……ちょっといいか」


一人の隊士が、部屋の中の光希を真っ直ぐに見つめている。

先程の男だ。


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