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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第63章 恋慕


「久しぶりだな、善逸。元気か?」
「まあまあだよ」

「お、黒い記章。それはかなり珍しいぞ。頑張ったな」
「うん」

元気のない善逸。
光希は左手でよしよしと撫でてやる。


「……やめろよ」
「なんで?」
「総司令官が一般隊士にこんなことしていいと思ってんのか」
「思ってるよ。元気のない隊士を励ますのも俺の役目だ」
「元気のない……『隊士』……ね」


悲しみが増す善逸。


「まあ、誰にでもする訳じゃねえけどな」

しかし、そう言われると頬を染めて顔を反らす。


………こいつ、相変わらずだな


「……お前さ、ちょっと横恋慕されすぎ」
「横恋慕だってこと、皆は知らねえからな。善逸のこと言ってないから仕方ないだろ」
「じゃあ、恋慕されすぎ」
「気を付けてんだけどな」
「嘘付け」

光希は手ぬぐいを外して右腕を見る。


「うわぁ……」
「腫れてんな」
「足袋のせいだ」
「いや、お前のせいだろ。足袋破れてすっ転ぶってどういうことだよ、全く。ボロ履いてんじゃねえよ」
「こないだ新調したばっかなんだよ」
「そんだけ稽古してるってことか……」

そこへ隊士が一人来る。


「如月、大丈夫か?って、お前は……」

善逸を見て訝しげに聞く。


「……お前は前の鬼刈りごっこの時、如月と一緒に鬼やってたな。同期か」
「はい」
「……ふうん」

男は善逸をじろりと睨みつける。


「なんでここにいる。準備にいけよ」
「あ……、いや」

「俺の指示だよ。少し話したくてね」
「……そうかよ。如月、怪我は」
「問題ない。もう少ししたら行くから。ありがとな」
「………」
「もう少しだけ、頼むよ。こいつ、俺の命より大事な奴なんだ」
「………わかった」

そう言うと、隊士は複雑そうな顔を浮かべてその場を去った。


光希は、ふぅと息を吐き、また手ぬぐいを水に浸す。


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