第63章 恋慕
「よっし!じゃあ皆は軍議まで休憩!ゆっくりしててくれ」
光希の指示に皆が「了解」と答える。
「……テメェはまだやんのかよォ」
「いつものことでしょ。それとも俺にやられた腹が痛いですか?ならやめますけど」
「馬鹿かァ。痛くも痒くもねえわ。……休憩はァ」
「要りません。あんたが欲しいならあげますよ」
「んなもん要るかァ」
光希が不死川の正面に立つ。
どうやら一対一で戦うようだ。
休憩を言い渡されたのに、隊士達は誰も席を立たずに見入っている。
善逸も庭先からその様子を見ている。
握った手が汗で湿っているのがわかる。
善逸のいる庭先に、わらわらと一般隊士達が集まってきた。
光希は不死川に頭を下げる。
「お願いします」
「……おォ」
光希は刀を構えると、ブワッと殺気を出す。
一気に不死川の所まで飛び込み、斬撃を打ち込む。鋭い一撃だった。殺す気でかかっていってる。
その一撃に善逸は度肝を抜かれる。
いつの間にこんなに強くなった。
しかし、不死川はそれを難なく受け止め、返す刀で攻撃しかける。
光希は攻撃をくぐって躱し、すぐさま足払いをかけにいく。
不死川は飛び上がって躱し、上から刀を振り下ろして狙う。
光希は速さを活かして転がって避け、不死川の背後に回り込んでまた狙う。
二人の攻防はとてつもなく速い。
速さは互角。だが、力は不死川が圧倒的に強い。鍔迫り合いになったら間違いなく負けるため、光希は攻撃を躱して徹底的に刀を合わせない。そもそも迂闊に刀を合わせたら、弾かれて取り落とすか武器破壊をされてしまう。
「躱してばかりじゃ駄目だァ!刀の腹で受け流せェ!」
「はい!」
途中で不死川の指導が飛ぶ。
言われた通りに刀で受けるが、木刀が粉砕された。
「うおっ!くそっ!!」
「違えよ!流すんだァ!!」
半分になった木刀を持って、とりあえず逃げに転じる。不死川からの攻撃を躱しながら手に持つ木刀を不死川に投げつけて攻撃し、走りながら隊士が持っていた木刀を「借りる」と言って取った。
また斬りかかって行く。
躱しきれない不死川からの斬撃を、手足に浴びていく。それでも膝をつくことなく、また攻撃をしかけていく。
その場にいた誰もが、二人の戦いから目を離せないでいた。