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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第62章 最後の夜


泣いて泣いて泣き疲れた善逸は、光希の部屋で仰向けに寝転がっていた。


『善逸は、あれだな。泣き虫の呼吸の使い手だな』
『おいこら馬鹿にしてんだろ』
『あはは、壱ノ型は【号泣】か?』
『んー、【男泣き】だな!』
『……お前、男泣きの意味わかってんの?普段泣かない男が泣くことをいうんだぞ?』
『そうなの?』
『だから、お前が泣いても男泣きじゃないな』
『……悪うございましたね』
『別に悪かねえよ。泣くのも大事』

『じゃあ……』



「泣き虫の呼吸……壱ノ型……むせび泣き……」



随分前に光希と話したことを思い出して、天井を見ながら少し笑う。



写真の隣に添えられた光希からのメモ書きには、写真をあげるということと共に今日の鍛錬は行かなくていいと書いてあった。まるで今の状況を予測していたかのようだ。


善逸はなんだか悔しくて逆に鍛錬に行ってやろうかとも思ったが、やはりそんな気になれずに休むことにした。

ぼんやりと考え事をする。
思い浮かぶのは光希との楽しかった日々。


『なあ、善逸。泣き虫っつー虫にも、羽が生えてるかもしれないだろ?凄く速く飛べるかもしれないし、本当は強いのかもしれない』
『虫は、嫌いだ』
『俺はそんなに嫌いじゃないぜ。格好いいじゃん!』
『お前、よく友だちと虫捕まえて遊んでたな。俺の背中にバッタ入れたの忘れてねえぞ』
『あはは!……まあ、泣き虫でも、大丈夫だってことだよ。うんうん』
『誤魔化したろっ!』


………泣いてばかりの俺を、呆れながらも見捨てずに、いつも励ましてくれてたなあ


また一つ涙が、頬を伝う。




「……泣き虫の呼吸、奥義、」


二人で考えた究極技。


「浄化」


善逸は目を閉じる。

悲しみで溢れる心の中に、暖かな光と優しさを見つけ出していく。



今は辛くても、それが希望に変わっていくはずだ……

落ち着いて、ゆっくり……
大丈夫……大丈夫……



自分に言い聞かせていく。


善逸の浄化の涙はまだ溢れているが、手足の震えは止まり、心が浮上してくるのがわかる。



「おお、なかなか凄えぞ『泣き虫の呼吸』。なあ、……光希」

目をつむったまま、微笑みを浮かべて呟く。



光希の笑い声が聞こえた気がした。


 
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