第62章 最後の夜
「ん……」
目を覚まし、ゆっくりと身体を起こす善逸。
自分の隣で眠る光希は、善逸の手をしっかりと握っていた。
寝ていた時間は僅かだろうが、浴室が冷えてきている。
「……光希、光希、起きて」
彼女の頬をぺちぺちと叩く。
光希が、んっ…と声を出し、うっすら目を開ける。
善逸はホッとした。
「光希、身体大丈夫か?」
「力……入んない……」
「ごめんね、無理させたね」
「………ううん」
そう答えた光希は本当にだるそうで、またゆっくりと目を閉じる。
善逸は光希に顔を寄せて、優しく口付けをした。
「……ちょっとだけ、お腹、ぐってできる?」
「んっ……」
光希が腹筋に力を入れると、中から大量の白濁液がこぼれ出た。
「上手上手。そのまま楽にしててね」
そう言って、善逸は手桶でお湯を汲み、光希の身体にかけてきれいに流していく。
後処理のために光希の身体をあちこち触るが、流石にやり尽くした善逸はさほど刺激されることはなくテキパキと片付けていった。
「……身体、冷えちゃったかな」
善逸は光希を抱きかかえ、まだ温かい湯船に入る。己の腕の中に抱きしめて、一緒に温まる。
光希は完全に寝てしまった。
眠る光希の背中を優しくトントンと叩きながら、善逸は小さな声で一人歌う。
月の見えない夜の闇
あなたと紡ぐ 愛のうた
求めるものはただ一つ
あなたと共に いつまでも
行かないで そばにいて
大丈夫 そばにいる
二人で繋いだこれまでを
これからに 変えて
わたしだけのあなたを
今は見えない 月の光に託して……
「あったかい……、あったかいねえ、光希」
善逸の目に涙はなかった。
その代わり、愛おしむように彼女の背中を見つめている。
「光希、……俺の方こそ、今まで沢山ありがとう」
「……ふふっ、どう…いたしまして」
「…………狸め」
首元で声が聞こえて少し驚いたが、善逸も小さく笑った。