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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第62章 最後の夜


「義勇さんから一本とって、この家借りて。この家で、お前と初めて…身体重ねて。美味しいご飯食べて、一緒に生活して……幸せだった」
「……おれ、も、…、」
「俺はあまり帰れなかったから、ほとんどお前に任せきり。掃除も全部お前がしてくれたな。ありがとう。ごめんな」
「………お前の部屋は、お前が、した…」
「そうだっけ?……ああ、そうだ。あの時喧嘩したからな」
「……そう」

「客間を掃除して、炭治郎呼んで、初めて人を泊めて」
「……カナヲちゃん呼んで、二人をくっつけて、なでしこの花渡して」
「俺が賭けに勝って、なにをしてもらうかはまだ保留中」
「余計なこと思い出させちまった……」
「そもそも忘れてねえから」

善逸の涙が止まり、喋れるようになってきた。


「お前、この家大好きじゃん。……たまには帰ってこいよ」
「…………」
「どうしても、無理なの?」
「……もう決めたんだ。俺は前へ進む」

「俺は置いてきぼりか……」

「お前のことはお前が決めろ。出来るだろ。俺が居なくても」
「………うん。出来るよ」

善逸は光希に手を伸ばして抱きしめる。


「俺はお前を離さない。どこに行っても追いかける。そして……戦いが終わったら、必ずここに連れ帰る」
「………」
「死なせない。戦いでも、その後でも。絶対に死なせない」
「………」
「最後じゃない。まだ、ここで、幸せな思い出は沢山出来るんだ。もっと……、もっと…、そうだろ?」
「………」

善逸は光希を抱きしめたまま、祈りを込めて言葉を紡ぐ。

光希は何も言葉を返せない。


「……無視は無しだろ」
「うん。聞いてるよ。ちゃんと聞いてる」
「じゃあ、聞いたなら、……お前の中に残しといて」
「……わかった」

光希は目を閉じて、善逸に寄り添う。


「これから先、ここに帰ってきてもお前……、居ないのか……」

止まっていた善逸の涙が、再び溢れだす。

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