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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第62章 最後の夜


「美味しい!」
「よかった」
「千代さんの味だ」
「へへ、再現出来てればいいけど」

「頑張ってくれてありがとう、光希」
「いえいえ、いつも作ってもらってるからね」

光希が穏やかに笑う。

「ね、伊黒さんの稽古どうだった?」
「……うん、いろいろとすごいよ」
「へえー!ね、第一声は?」
「『……来やがったな、このゴミカスが』でした」
「あははは!」
「笑いごっちゃねえ!」

光希の恋人という札を貼られている善逸。
柱からの当たりはどうしてもきつくなる。
でもその中で頑張っている善逸を、逞しく思った。

「突破できるといいなぁ」
「まあ……正確な太刀筋は大事だし、頑張るよ」
「……うん!」

善逸は沢山お代りして、お腹一杯食べた。

食後のお茶を準備する光希。


「ねえ……善逸」
「ん?なに?」
「縁側で、お茶飲まない?」
「……え」

「話があるの」

真剣な目を向けられて、善逸は一瞬言葉が出なくなる。光希からは、少しの緊張の音がする。

「……うん。わかった。外は寒いから、もう一枚何か羽織っておいで」

光希がお盆に準備した茶器を善逸が持って台所を出ていく。

光希は自室に戻り、花柄の羽織を引っ張り出して肩に羽織る。足も冷えないように長めの足袋を履く。

縁側に行くと、善逸は空を見ていた。

「天気が悪いなぁ……月、見えねえや」

光希は、そんな善逸を見ながら、縁側の柱に背を持たれかけさせて座る。


「まあ、月も天気も、俺たちの思うようにはいかねえよ」

「……光希」
「善逸。薄々わかってると思うけど、俺がこの家で過ごすのは、……今夜が、最後だ」

光希は善逸の目を真っ直ぐに見て、そう告げた。


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