第60章 判断
「……なあんだ、そうならそうと早く言えばいいのにぃ」
善逸が笑顔満開になって光希を抱きしめる。
「いや、言ったんだよ、私は。善逸がごちゃごちゃ言うからこうなったんでしょうが」
「お前はさあ、本音なのか計略なのかわかんねえのよ」
「そこはほら、推測しなきゃ」
抱き合いながらクスクスと笑い合う。
「よかったぁ……せっかく一緒にいられるのに喧嘩になっちゃうのかと焦った」
「喧嘩にならないように、ちゃんと私が身を引いたでしょ」
「……やっぱり計略じゃん」
「こんなのは計略でもなんでもない。ただの判断だよ」
「もういいよ」
善逸が、自分の唇で光希の口を塞ぐ。
『善逸はどうしたいの?』
風呂で言われたことを思い出す。
「……俺は、お前を抱きたい。身体が辛くなったら言って」
「うん。でも、途中で私が気を失ってもやめないで」
「そんな無茶は出来ないよ」
「いいの。お願い」
「……じゃあ状況をみて、俺が判断するよ」
「うん、じゃあ、それで」
光希は嬉しそうに笑った。