第60章 判断
「小隊長候補って……」
「現場で指揮を取れる隊士だよ。柱稽古を通して指揮官や分団長を選出してる。私一人で全ての指揮を取るのは無理だからね」
「そうだったんだ」
「ねえ、俺や炭治郎はそれにならないの?」
「ならない」
「なんで?」
「個別で戦える剣士は隊に所属させない。自由に動いた方がいいんだ」
「ん?」
「強い人たちは、お任せってこと。善逸たちは一隊士ではなく、柱と同等の扱いだよ」
「俺、強いの?」
「もちろん。……だから、自己判断がより大切なの。俺が、見てあげられないから」
光希は「あ、俺じゃなくて、私だ」と言い直す。
「……光希無しで戦うのか」
「たぶんね。どういう形で戦いが始まるかわかんないから、なんともいえないけど」
「それは、不安だなあ」
「頑張れ。隊には所属させない」
「策も無いの?」
「無い。策は要らない。出会った鬼を倒すのみ。だから策より、判断なの」
「俺はさっき、判断を間違えたんだよね?」
「そうかもね」
「……せっかく光希がわざわざ術を使って仕掛けてきてくれたのに」
「術?」
「ほら、なんかあんでしょ?色仕掛けっつーかさ、男を誘惑する、なんたら術」
「房中術?」
「そう、それ」
「……なんでそんなの知ってんだよ、他に覚えてほしい策が山盛りあんのに……」
光希は頭を抱える。
「えへへ」
「………出処は天元さんだな。くノ一が得意な術だからな」
「凄え!大当たりだ」
「何いらんこと教えてんだよ……あの馬鹿忍者」
光希は、ふぅ…と一息吐く。
「房中術は……私には使えないよ。別にそんなつもりでやったわけじゃない」
「え、違うの?」
「私には無理だよ」
「そうなんだ。光希に使えない技とかあんだな」
「あれは、いろんな男ともっともっと経験積まないと出来ない。褥の中で男を惑わす技だよ?私にできるわけないでしょ!」
「だ、駄目だ!そんな技習得しなくていい!」
二人で赤くなってわたわたとする。
「じゃあ、風呂のあれは、計略じゃなかったんだ」
「……そだよ」
「じゃあ、」
「単純に、抱いてほしかっただけ」
「……本当に誘ってたの?俺を」
「そう言ったじゃん」
善逸は驚き、光希は顔を赤くして俯いた。