第60章 判断
取り残された善逸は、しばらくぽかんとした後、風呂場をのたうち回って反省した。
反省する内容が多すぎて、絞れない程だ。
その後湯船に浸かって、しくしく泣いた。
めげていても仕方ないので、風呂から上がってのそのそと着替える。
台所へ行って、水を飲む。
……光希、怒ってるかな
ふぅ…、とため息をつく。
なんで一緒に居られる大切な時間なのに、こうなってしまったのだろうか。
とぼとぼと居間に行くと光希はおらず、彼女の自室から気配がする。仕事をしているようだ。
意を決して声をかける。
「光希ー…?ちょっといい?」
意を決したわりに予想以上に情けない声が出て、自分でも悲しくなる。
「いいよ」
部屋から声が聞こえたので戸を開ける。
やはり彼女は机に向かって仕事をしていた。
「…、……あの」
「善逸、ごめんね」
「……え」
光希が先に謝ってきた。
「ごめんね。私の勝手な焦りで善逸に嫌な思いさせたね。ごめんなさい」
「や、あの、俺の方こそごめん。光希が俺の為を思って考えさせようとしてるのはわかるよ」
「そっか。でも、もういいよ」
「もう、いい?」
「うん。私と善逸は考え方が違う。押し付けるのはよくない。私が善逸の分まで考える。だから、もういい」
……呆れられた?見捨てられたってこと?
善逸は少し焦る。
「今ね、小隊長候補を集めて軍事指南してるのよ。で、ついついそっちの思考になっちゃった。ごめんね。善逸にそこを求めてはいけなかった。善逸の言うとおり、あなたは指揮官ではない」
「ううぅ……」
「なんで泣くのよ」
「だってぇ、怒ってる……」
「怒ってない。ってか、怒ってたとして、怒られて泣かないでよ。いくつよ」
「……うぇぇ…」
「だから、ごめんって。これは私の失敗。機嫌直して」
「違う。俺が、馬鹿だから……」
「まあ、それは、うん。否定はしない」
「……うぅ…、」
善逸に手拭いを渡してやる。
「ほら、もう泣かないの」
「ごめんね、光希」
「善逸は悪くない」
頭をぽんぽんと叩いて落ち着かせる。