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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第60章 判断


「光希……、やっぱり抱きたいって言ったら駄目?」
「駄目」
「……どうしても?」

「一度で判断しなきゃ。戦闘中は、刹那の間にいくつも判断していくんだよ。二度目の選択なんて許されないでしょ」

善逸がしゅんとなる。


「ほら、交代して?私、足伸ばして湯船に浸かりたい」

善逸がゆっくりと湯船から出て来て光希と入れ替わる。


善逸がゴシゴシと身体を洗う様子を見ながら、湯船で手足を伸ばす。



「……しょんぼりしてる場合か。さあ、考えろ善逸。俺を抱きたいなら」

光希が小さな声で呟く。


「え、でも、駄目だってさっき……」
「あ、諦めるんだ。まあ、それならそれで」

「………」
「手掛かりは沢山やってるだろ」
「………」
「終着点から考えるんだ。終着点とはお前の意思。さあ、頑張れ」


ここで、軍事指南を受けているのだと善逸は思い至った。この先の戦いで自分が死なないように、教えてくれている。

なんで今なんだよ、と思いつつ、善逸は身体を洗いながら考える。


「……俺は、一度目の選択を間違えていない」
「ほう。なぜそう思う」
「なぜなら、俺はまだ考え中だったからだ。だから、今からさっきの選択をする。お前を抱く」
「……認められない。遅い判断は、選択を間違えたのと同様だから」
「……ちっ」
「はい、次」

「二度目の判断だっていいじゃん!人は意見が変わるものだろ!」
「キレんな。そんなのは認められない。次」

「ねー、どうしたらいいの?わかんないよお。手掛りちょうだい!」
「……それはお前の策か?泣きつくのは」
「そうだよ」
「なら、それにも一定の効果はあると評価して……手掛かりを一つ。………もう、さっきのことは捨てるんだ。二度目は無いと言っている。つまり、一度判断を間違えたのなら、仕切り直せということ。新たな策で相手を引きずり込むんだ。失敗をしても引きずらずに即座に切り替えろ」


光希はのぼせないように湯船の縁に腰掛けて、足湯のような体勢になる。もちろん善逸には背を向けている。

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