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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第60章 判断


光希はぼんやりとしながら湯船に浸かっていた。善逸は湯船に近付いて、手桶にお湯を汲んで軽く身体を洗う。


「……お湯加減はいかがですか?」
「なかなか良いですよ。極楽です」

善逸が光希に話しかけると、身体を隠しながら彼女が笑って答えた。


「それは何より。……私も湯船に浸かりたいのですが、良いですか?」
「……生憎、一人用でございまして」

くくっ、と善逸が笑う。


「それはそれは。しかしながら、ここは寒うございます。どうか私もご一緒させてくださいまし」
「……仕方がないですね。特別ですよ」

光希が湯船の端に身体を寄せ、空いた所に善逸が身体を滑り込ませる。


「うわ、善逸、身体冷たっ」

身体が触れ合って、光希が声を上げる。


「だって、お前がなかなか入れてくれねえから」

善逸が狭い湯船の中、光希を横から抱きしめる。


「あったけえ……」
「うん、あったかいね」

光希の白い肩口に頭を寄せ、身体を密着させる。

……うわ、やば。無理かも

善逸が葛藤してると、光希が腕の中でもぞもぞと動き出す。

光希は身体の向きを変えて、善逸と向かい合わせになり、彼に抱き付く。


「……誘ってんの?我慢できなくなるんだけど」

「うん、誘ってんの」
「は?本気で言ってんの?冗談なら笑えないぞ」

パチャッと水音を立てて、光希が湯船の中で膝立ちになり善逸の頬を両手で掴む。

「冗談じゃないよ」

そのまま彼の顔を上げさせて、上から自分の唇で口を塞ぐ。

善逸は驚いて目を開いたままだ。


ちゅっと音を立てて口が離される。

「光希……」
「抱いてよ、善逸」
「いいのかよ」
「なんで?」
「だって。お前、身体が…、」
「さあね。大丈夫かなんてわかんない」

「なら…、」
「いいじゃん、そんなの」
「でも、冨岡さんも、駄目だって」
「駄目って言われたら、止めるの?」
「そういうわけじゃ、ねえけど……」


「善逸はどうしたいの?」


光希は善逸の頬を掴んだまま、真っ直ぐに彼を見つめる。


「俺は……」


善逸は光希を見ながら黙ってしまった。

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