第59章 血
二人は笑いながら食事をとる。
「美味しい!最高!楽しい!幸せ!」
「はは、よかった」
「ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして。ちゃんと食えよ。貧血なんだろ」
「うん。ちょっとだけね」
「いや、だいぶな。残念でした、冨岡さんから聞いてまーす」
「ちぇ……、でもさっ!聞いてよ。私の血、使えそうなんだ!だからいっぱい採ってもらったの!」
「そうか!良かったな」
「うん!……禰豆子が戻れるといいなあ」
光希は心底嬉しそうな顔をしている。
「でも、それでお前が体調崩してちゃ駄目だろ」
「う……、まあね。はい!そんな私の強い味方!じゃじゃじゃーん!!」
「ん?」
「増・血・剤!!」
「いや、そういうこっちゃねえんだよ」
懐からドヤ顔で薬を取り出す光希に、善逸が苦笑いをして目を細める。
ふざけあって、笑い合って、いちゃつきあって。
楽しくご飯を食べ、食器を片付ける善逸を椅子に座って嬉しそうに見つめる光希。
これが、ここで過ごす最後なのかもしれない。
そう思って、目に焼き付ける。
「……どうしたの?」
「何が?」
「そんなに寂しい音させて」
洗い終わった善逸が手を拭きながら、光希を見る。
「寂しい音、してた?」
「うん」
「そっか。……気のせいじゃない?」
光希が、にこりと笑う。
「だって、今、こんなに幸せだもん。私」
噛みしめるように光希が言う。
「気のせいじゃ、ねえよ」
善逸が光希の側に座り、自分の方を向かせる。
「幸せなのに、何で寂しい音するの」
「……さあ」
「誤魔化さないの」
「………」
「今お前が思ってることを当てようか」
「やめて」
光希は善逸を止める。
「私、暗くなるの嫌い。……知ってるでしょ」
「知ってるよ」
「だから、楽しく過ごしたいの。ね?」
「………わかったよ」
「流石、兄様。私の言うこと何でも聞いてくれるねっ!」
「お前の我儘に何年付き合ってきたと思ってる。こんなの今更だわ」
善逸はそう言って、光希の頭を撫でる。光希はその優しさに感謝をした。