第59章 血
義勇と二人になり、少しの沈黙。
水を飲もうと立ち上がろうとしたら、くらりとした。
「……っ、」
「おい」
両膝を付く光希に義勇が駆け寄る。
「……はは、こりゃなかなかですね」
「大丈夫か」
「目が回る。気持ち悪っ」
「吐くか?」
「や、とりあえず大丈夫です」
吐いてもいいように、手桶をそばに置いてくれる義勇。水も取ってくれた。
「すみません」
「いや」
「俺、ちょっと寝ます。もう大丈夫ですよ」
「………」
暗に出て行けと言ったのだが、動かない義勇。
「義勇さん……」
「家へ帰れ。連れてってやる」
「……うーん、鍛錬は出来ないとしても、でも、事務仕事はやらなきゃ」
「家でやれ」
「仕事を運んでくれる鴉の負担が大きくなります。かわいそうだ」
「俺が届ける」
「もっと駄目でしょ!師匠を走らせるなんてあってはならない!」
そこへ隠が報告書を持ってくる。
布団の上で報告書を読む。
本日の柱稽古の状況も書かれており、善逸が無一郎の稽古を突破したようだ。記章獲得者にも記載されている。
善逸の記章が三つ揃った。
「義勇さん。……やっぱり俺、家に帰ります。二日程」
「そうか」
驚きながらもホッとする義勇。
「仕事はどうしようかな……」
「緊急連絡以外はこちらで対応する。お前らはゆっくりしろ」
お前、ではなく、お前ら、と言われて、義勇が状況を理解したのだとわかる。
「仕方ない……鴉くんに頑張ってもらうか。ある程度の報告はください。全部丸投げするなんて無責任過ぎます」
「わかった」
「いつ帰る」
「明日の昼にでも。夜の移動は出来ませんから」
「わかった。連絡をしておけ。無人の所に返すわけにいかない」
「はい」
「悲鳴嶼には俺から話す」
「それは自分で……」
「寝ろ」
「……はい」
光希は布団に横になった。
完全に貧血だ。