第59章 血
一方光希は。
産屋敷邸に戻ってからは、とにかく忙しく過ごしていた。脳みそと身体をフル回転させて仕事をし、その隙間を縫って鍛錬もしていた。
そして、決戦に向けて夜型の生活に変えていった。
机上の灯りで報告書を読む。
伊之助はどんどん鍛錬をクリアして、トップ集団に入っている。伊黒の鍛錬を終えて、早くも不死川のところへ行くようだ。
記章も全て集めている。
……流石、猪突猛進。頼もしいなぁ
思わず顔がほころぶ。
頭をめちゃくちゃに撫で回して褒めてあげたい。やめろ、と言いながら喜ぶ姿が目に浮かぶ。
朝まで仕事をして、そろそろ寝るかと布団に入ろうとしたとき、隠が来た。
「あちらより、お手紙です」
「! ありがとうございます」
しのぶからの手紙を急いで読む。
そこには、渡した薬の本の中に、使えそうな物が数種類あったこと。
そして、光希の血がやはり特殊なものであり、鬼の細胞に対して効果が見られた、とのことだった。
光希は寝間着のまま部屋を飛び出し、悲鳴嶼のところへ走る。
「そうか!それは凄いな!」
「はい!役に立てそうで嬉しいです」
「また血を採るのか」
「はい、昼頃しのぶさんが来てくれるので、限界ギリギリまで採ってもらいます」
「では、しばらくは鍛錬禁止だ。貧血で倒れるぞ。食事量も増やすんだ」
「増血剤もらうから大丈夫です!」
そう言って笑う光希に「そういうことではない」と苦笑いする悲鳴嶼。
部屋を辞して廊下を歩いていると、前から義勇が来た。
「義勇さん。おはようございます」
「寝間着でうろつくな」
「あ!本当だ。……えへへ」
へらりと笑う光希に、密かにため息をつく。
「……今日」
「はい!いらっしゃいますよ!時間見つけて会ってください」
義勇が、しのぶからの連絡を受けてここに来たのだとわかる。
「今から寝るのか」
「はい。仮眠ですが。お見えになったら起こしていただけますか?」
「わかった」
「では、おやすみなさい」
声をかけて部屋に入ると、そのまま布団に飛び込んで眠った。