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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第58章 光


「ありがとう」
「うん」

「でも、流石にもらえねえわ」
「そうか?いいのに」
「お父さんとお母さんに申し訳ないよ。これは、お前がちゃんと持ってろ」

そう言って、善逸は本を光希に返す。

「また見たくなったら見せて」
「ん。わかった」

「いやぁ、いいもん見たわ」
「へへへ」
「つか、写真の入れ方がさ……」
「俺の親っぽいでしょ。俺も笑った」
「うん、最後にあの笑顔を持ってくるあたりが、策士だなぁ」
「ほんとほんと」

二人でクスクス笑う。


「さて。俺、戻るね。義勇さんずっと待たせてる」
「……うん」
「もう大丈夫だよな?」
「ああ」
「よし」

光希が立ち上がる。

「ねぇ、光希、いつ隠れ家に来れる?」
「……うーん」
「忙しいよね、わかってるよ。でもさ……」
「善逸が、記章を三つ集めたら」
「え?」
「あと一つ、もらえるように頑張りな!そしたら俺も隠れ家に帰る」
「本当?」
「うん!」
「よし!なら俺、頑張るよ!」

「頑張れ、善逸」

光希はそう言うと、腰をかがめて、まだ座っている善逸の頬にそっと口付けを落とす。


「……ありがとう。お前は俺の、光だよ」

光希は善逸の耳元でそっと囁き、家を出ていった。



家に残された善逸はポカンとしていた。


光希が、仕事中にこんな事をするなんて。信じられない。

混乱しながら、だんだんと朱に染まっていく頬を誰もいない家で隠した。

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