第58章 光
「うわー……、可愛い。めちゃくちゃ可愛いんだけどこの子。なにこれ、お人形みたい」
「あはは、でも笑顔じゃないの。なんか不機嫌そうだよな」
善逸は次の頁をめくる。
やはりムスッとした顔をした女の子の写真。大きく撮られており、表情がよくわかる。
右と左に一枚ずつ。家族写真と同じ日に撮ったと思わる写真と、もっと一際小さい頃の写真。小さい頃の方はまだ髪が短くて、母親に抱かれながらむすくれて半泣き状態である。
「ぷっくくく……、お前、泣きそうになってる」
「俺、写真嫌いだったみたい」
「これはこれで堪らなく可愛いけどなぁ」
そして最後の頁。
「……、っ!」
善逸が言葉を飲む。
「えへへ。これがおそらく会心の一枚だ」
そう言って、光希が笑う。
そこには笑顔全開の光希がいた。
振り向きざまを狙ったのか、髪の毛は少し動いてぼやけている。ピントもなんとなく甘い。
写真が嫌いな光希の笑顔を撮りたくて、頑張ったのだろうと推測される。
今の光希の面影を色濃く残したまま、あどけなく素直に笑っている。
「これは……凄いわ。可愛すぎ」
「だろ?」
「炭治郎ちゃんがイチコロで落とされるのもわかる。この子は本気でやばいわ」
「あはは!もし会ってたら善逸ちゃんもイチコロかな?」
「ああ。速攻で結婚申し込むね。ははっ」
「あははは!やめろ!早えよ!光希ちゃんに嫌われるわ!」
笑いながら、熱心に写真を見る善逸。
「母様の本に挟んであったんだ。俺が見つけてこっそり回収した。誰にも見せてない。……見たのは、俺とお前だけだ」
「俺だけ…」
「そうだよ。特別な」
「……そっか」
善逸はまたじっと写真を見る。
「……欲しけりゃやるよ」
「えっ…、いや、もらえないよ。だってこれは、お前の大事なものだろう。家族の記憶だ」
「まあな。でも、俺は別に昔のことはいいんだ。今の方がよっぽど大事。で、今の中では、お前が一番大事。だから別に思い出は要らない」
そう言って、写真と同じように笑う。
善逸は、心がぽかぽかと温かくなっていくのを感じた。