第58章 光
「信憑性はねえだろう。実際に戻したこととかあるのかよ。お前は信じるのか、これ」
「天元さん…、それはわからない。俺も全てを信じてるわけじゃないけど、……可能性はあると考えている。それに、あちらも苦戦しているようだから、とりあえず全て伝えたよ」
光希は薬という言葉を使わずに話す。
「遊郭で禰豆子が暴れて人に襲いかかった時があってさ……。俺、その時、無意識に食われようと思ったんだよね。なんつーかさ、体が勝手に動いたんだよな。炭治郎が止めなかったら、俺は食われてた。それでいいと、思った」
「いいわけがないだろう!」
「わかってるよ、炭治郎。たとえそれで禰豆子が戻ったとしても、お前ら兄妹が深く傷つくのはわかってる」
善逸が小さな声で呟く。
「お前も飲んでたのか、その……」
「ああ、にっがいやつを飲んでた。十年飲んでないけど。製法ももうわからない」
「じゃあ本当に…お前は……」
「ああ。竈門と対をなす者、だ」
光希は善逸の前ではっきりと言い切った。
もうこれは決定的だと善逸は思った。
何故光希の刀が黒に近くなったのか。
おそらく、炭治郎の影響を強く受けたからだ。
炭治郎の隣に寄り添うべく生まれてきた光希。光希の隣にいるべき男は、やっぱり自分じゃなくて炭治郎だ。
「我妻、何を落ち込んでいる」
「え」
「今、一番辛いのは誰だ」
義勇が善逸を睨むように見つめる。
「義勇さん、いいですよ。厳しくするのは俺だけにしてください。善逸はちゃんとわかってます。少し待ってあげてください。こいつは頭を整理するのに時間かかるんです。な?」
光希が善逸に笑いかける。
「炭治郎も、頭ぐちゃぐちゃだよな。ごめんな。……俺、いろんな記憶辿って、考えるから。鬼倒す方法、見付けるから」
炭治郎の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「天元さんも、急にごめんな。あんたには報告しときたかったんだ。これは俺と炭治郎のことだし、柱への全体報告はしなくていいかなと思ってるんだけど、どうだろう?」
「……いいと思うぜ。お前が言いたい奴にだけ報告すればいい」
「わかった。ありがと」
「報告は、以上だ。何か質問はあるか?」
光希は軽い感じで聞く。