第58章 光

「質問って、そんなの一つだろう」

炭治郎が心配そうに聞く。


「お前は大丈夫なのか、光希」
「……大丈夫だよ、炭治郎」

光希はにこりと笑う。


「嘘つけ…！なんで大丈夫なんだよ！こんなの、こんなの知って大丈夫なわけ無いだろ！」
「善逸、騒ぐな」
「だって、だって……！お前は……！」
「大丈夫だ。俺はもういっぱい泣いたから。泣いて騒いでぐずってたっぷり迷惑かけたんだ。だからもう大丈夫だよ」

「冨岡に頼ったのか」
「そうだよ」
「やっぱり、善逸から冨岡に乗り換えたのかよ。家系としては炭治郎が相手だし、お前は一体どいつと一緒になるんだ？」
「もう、だからなんでそうなるんだよ。やめてくれよ、善逸は今いっぱいいっぱいなんだよ」

善逸は膝を抱えて、頭を埋めている。

「ほらっ見ろよ！どうしてくれんだよ！がっつりへこんじまっただろうが」

「我妻、しっかりしろ。お前がそんなことでどうする！」
「義勇さんも、追い打ちかけないでください！」

そこへ隊士が帰ってくる気配がする。
光希は慌てて善逸に駆け寄る。

「やべっ、……おい善逸歩けるか？家ん中に戻るぞ」
「…………」
「炭治郎、善逸を運んでくれ」
「あ、ああ」

炭治郎が善逸を抱え、三人はそそくさと家の中に入る。

大人二人も立ち上がる。

「あいつら、どうなるのかねえ」
「知らん」
「少しは興味持てよ」
「持たない」
「お前……」

「……光希と炭治郎の間に恋愛感情はない」
「しっかり見てんじゃねえか！」
「無論、俺と光希の間にもな。あいつは、我妻だけだ」
「なら、それを善逸に言ってやれよ……」

宇髄は頭を押えながら、稽古に戻る。
義勇は家に入り、隅の方に座る。


上がってすぐの部屋の端で善逸がうずくまり、炭治郎と光希が困ったような顔でそれを見ている。


「やっぱり善逸には報告しない方がよかったかな」
「そんなわけにはいかないだろう」
「まあな」

炭治郎は、耳飾りの絵が書かれた本をめくる。

「これは、まだ読める」
「うん。それは多分、戦国時代の本……かなぁ。貸してやろうか」
「いいのか？」
「いいよ。俺はもう読んだし」
「ありがとう。じゃあ、借りる」

炭治郎がパラパラとめくる。