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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第58章 光


「読めた?」
「ああ」
「読んだけど……これじゃよくわからないな」

「じゃあ、上級編だ」

光希がそう言うと義勇が黒い表紙の本を出す。

「……古い、本だな」
「隠し戸から見付けた」

炭治郎、善逸、宇髄が息をのむ。

「ここから先、内容を言ったりすることはしないでくれ。わからない字は指差してくれれば読みだけ教える。短いからすぐ読める」

光希は声の音量を下げてそう言う。

「天元さんも後ろから覗いて」
「……おう」

炭治郎と善逸はまた同じように二人で本を持ち、読み始める。

光希は二人の表情が見れなくて俯く。
胡座に乗せた手を固く握り、震えそうになるのを必死で堪える。


「光希……」

善逸の声がして、顔を上げる。


「どうしよう、全然読めない……」

「……は?」
「難しい。俺も、……わからない」


……こ、この馬鹿共

光希は頭を抱える。
緊張していたところに肩透かしをくらって、少し気が抜ける。


「どこ?」

光希は正面から近付き、本の逆から覗き込む。

「ここから、ここまで」
「全部じゃねえか」
「だって、難しいよこれ。こんな本読んだことねえもん。漢字ばっかり」
「お前は、絵本の桃太郎で止まってんのか!」
「俺も、わからない。なんだこの字、見たことないぞ」
「古文書だからなぁ……変体仮名は読めるか?」
「うん、たぶん。ある程度なら」


誤算だった。
二人の識字レベルを見誤った。

自分たちが読めるものだから、当然読めるものだと思っていた。

「はは、お前こそ自分の物差しで考えてんじゃねえか。やっぱり俺がいないと駄目だなあ」

宇髄が、にやにやしながら光希に話しかける。眉をひそめる光希。

「くそ……」
「ご、ごめんね、馬鹿で」
「いや、善逸。お前たちのせいじゃない。俺が悪い。……、どうしようかな」

「二人を連れて、本部へ戻るか」
「そうですね。あそこならまだ、声に出して読める」
「昼間だし、鬼は出ないだろ。ここでも大丈夫じゃないか?」
「いや、わからないな、どこでどう見られてるか。……せめて家の外、太陽光の下で小声で読むか」

五人はぞろぞろと家から出てくる。
影のない庭の真ん中に、円になって座る。

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