第58章 光
光希を追いかけて走りながら、善逸は義勇に話しかける。
「冨岡さん、あいつ……」
「見ての通りだ」
「だからあなたが同行してるのですね」
「………」
「探すときも一緒にいてくださりありがとうございました。光希がお世話になりました。あとは俺が引き受けますからもういいですよ」
善逸は牽制しながらそう言う。
「あいつ本人がそう言うまで、俺は同行する」
「ふうん……」
二人の関係性が何かしら変わった気がする。光希の浮気を疑う訳ではないが、面白くはない。
善逸は速度をあげて、光希の隣を走る。
表情を見ても、特に変化はない。
「横見て走ってっと転ぶぞ、善逸」
「このくらいの速さ、余裕だっつの」
「相変わらずの足の強さだな。あのさ、霹靂一閃の時ってさ……」
光希は走りながら善逸に足の使い方を聞く。
善逸は苦笑いしながら答えていく。
林を抜けると、宇髄の練習場が見えた。
「ふう…早く着いた。よかった。炭治郎どこにいるかな」
きょろきょろとしながら歩き出す光希。
家の方に行くと、待ちくたびれた炭治郎は自主稽古をしていた。相当走って、相当素振りしたのだろう、はぁはぁと息が上がっていた。
「光希っ!」と、汗だくのまま笑顔で手を上げる炭治郎を見て、善逸と義勇は「こいつらそっくりだな……」と思った。
宇髄の家に入ると、彼は指導に行ってるのかそこには居なかった。
「たぶん、山に行かれてると思う。俺、呼んでくるよ!」
「いや、俺が行く。炭治郎は善逸とこれを読んでてくれ」
光希は本を取り出す。
「え、これ、炭治郎の!」
善逸が炭治郎の耳飾りを見る。
「……俺の家と、光希の家のことが書かれてるんだな」
「そうだ。とりあえず入門編だ。書斎の本棚から見付けた。そこそこ長さがあるから、紙を挟んであるところだけでいい。あと最後の頁な」
炭治郎は本を持ち、じっと見つめる。