第58章 光
「まずは蜜璃さんのところに頼む」
「おう」
鴉の案内で甘露寺邸に向かう。
甘露寺の家はさほど遠くなく、二人の足で歩くとすぐに着いた。
「おお、ハイカラな家だなあ」
見えてきた家に光希が声を上げる。
「光希…っ!」
声と気配に気付いたのだろう、外で待っていた善逸が駆け寄ってきた。
「……冨岡さん」
義勇にも気付いて驚いた顔をする。
「善逸、お疲れさま」
光希が笑いかける。
善逸の胸に付けられた記章を見る。
「あ、天元さんのも貰えたんだな。凄いな」
黄色と桃色の小さな記章が揺れている。
「ああ。隠の人が持ってきてくれたんだ。へへっ」
善逸は嬉しそうに自分の胸元を見る。
「善逸、今から炭治郎の所に行くぞ。あいつ待ちぼうけてるだろうな」
「えっ?報告があるって手紙で来たけんだけど」
「ああ。だから、炭治郎にも一緒に報告させてくれ。天元さんも」
「……何が見付かった」
「あっちで話すよ。……何度も話したい内容じゃないんだ。楽しい話…ではない。悪いけどまとめて報告させてくれ」
「そうか」
「義勇さん、行きましょう」
「ああ」
三人で歩き出す。
「光希、その服」
「うん。釦が赤くて格好いいだろ?」
「ああ。似合うな」
光希から聞こえる、不安の音。
義勇から聞こえる、心配する音。
……光希、一体何が見付かった
善逸は握った手にじわりと汗を書くのを感じた。
横を歩く光希を見ると、いつもどおりの落ち着いた顔をしている。
「なんだよ、ジロジロ見て」
「あ……いや」
「蜜璃さんと比べて見劣りしててすみませんねえ」
「な…っ!そんな事思ってねえよ!」
「ははは」
いつものように笑う。
それを見て、善逸の不安が増す。
「走ってもいいですか?」
「構わない」
「え?走るの?」
「うん、走るよ!鴉くん速度上げて!」
光希は街道脇の林に入って走り出した。
全速力だ。
迷いや不安を振り払うように思い切り駆けた。