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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第58章 光


「思えば、……俺はずっとあなたに面倒をみてもらってきましたね。蝶屋敷を一緒に出たときから、一番側にいてもらった」

「俺は育手を失っているから、師匠はあなただけです」

「だから今回は、あなたの存在で心を回復したいと考えていました。それが出来ると思ったからです」
「……出来たのか」
「はい。もう大丈夫です」

光希は角将を残して駒を片付ける。

角を将棋盤の真ん中にパチンと置く。


「俺は、駒の中で角が一番強いと思っています。俺の手筋を見てとうにご存知とは思いますが、俺は飛車派ではなくて角派です」

「俺の中ではあなたが角で、俺の光です。一番、信頼しています」

義勇は盤上の角を見つめる。


「部屋に戻ってきてから、ずっと考えていた。俺の中に光があるのだとしたら、それは今まで俺を支えてくれた……大切な人たちだ」

「炭治郎が如月にとっての光、善逸が光希にとっての光。ならば、あなたは鬼殺隊士・如月光希にとっての光です。……俺自身は闇だけど、こんだけ照らしてもらえれば嫌でも輝く。その光を俺は背負って、皆に届ける!」

光希は立ち上がって行李から赤い釦の隊服を出して肩に羽織る。

「ふふ、こんなにいろいろ考えながら指して、それでも負けない俺、最強!」

光希がニヤッと笑う。
将棋盤の前に座り直し、角を指で挟んで取り上げた。

「これからも、よろしくお願いしますね。……師匠」

義勇に見せながら、箱にしまう。



膝の上で手を握り、何もなくなった将棋盤を見つめる義勇。

「初めて見ます。そんな顔」

光希が興味深そうに義勇の顔を覗き込む。
義勇は眉を寄せ、涙を堪えるように口を真一文字にきゅっと結んでいた。


「あれ?泣きますか?」
「……まさか」
「ですよね」

光希は笑って、上着を着替える。

義勇は呼吸を整えて感情を抑えていく。


「俺が、角となって、お前の光になってやる」
「お願いします」


光希の胸で、血のように赤い釦が光った。

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