第58章 光
駒を片付ける義勇を光希が止める。
将棋盤の上に散らばった駒を、じっと見る。
王将を手に取る。
「これが、輝利哉様」
パチンと音を立てて、王の位置に置く。
「飛車、角は誰だろう」
光希は口元に手を当てて考え込む。義勇は光希がやっていることを理解する。
「……飛車は悲鳴嶼さん、角は義勇さん」
飛車と角をパチンパチンと置く。
「いや…違うな。悲鳴嶼さんは王の隣にいて欲しいから、金だな。変更する。悲鳴嶼さんと天元さんを金にして、王の守りを固める」
「飛車はどうする」
「実弥さんです。敵陣にまっしぐらに飛び込む感じがぴったりだ」
光希が笑う。
「銀は誰だろう」
「伊黒と時透」
「いいですね。二人とも攻守に長けている」
「桂馬……」
「胡蝶と甘露寺か」
「しのぶさんの桂馬はぴったりですが、蜜璃さんはあまり桂馬っぽくないですね。ま、いいか」
金、銀、桂馬を置く。
「香車はもう決めてるんです」
「炭治郎」
左端に、パチンと置く。
「伊之助」
右端に、パチンと置く。
「お前、香車好きだからな」
「ええ」
光希は両端の香車を愛おしそうに見つめる。
桂馬を一つ盤から取る。
「しのぶさんは持ち駒にしておきたい」
カタンと駒置きに桂馬を置く。
「負ける気がしねえ」
将棋盤を見つめる光希。
目に生気が宿っている。
「……お前はどこにいる」
「俺は軍師だからここの中にはいません。ただ、俺の思いとしては、兵士として参加して……この歩兵でありたいと願う」
光希は王の前に立つ歩兵を指す。
「中飛車で来られたら真っ先に取られるぞ」
「後ろの悲鳴嶼さんと天元さんが助けてくれます」
「そしてもう一つ」
義勇の方から、香車を一つ手に取る。
「これが、善逸」
ぎゅっと握りしめる。