第7章 冨岡邸
眠りから覚めた光希。
腹部の痛みはだいぶ収まっていた。むくりと布団から身体を起こす。身体がくらりとした。
ふらつく身体で厠へ行き、経血の処理をする。
部屋に戻ると、千代がいた。
「あ、光希ちゃん、身体どう?お昼できたけど、食べられそう?」
「大丈夫です。さっきはありがとうございました。良く寝られました」
青い顔でにこりと笑う。
「よかったわ。じゃあ持ってくるわね」
「あ、あの、千代さん」
「なに?」
「一緒に、食べませんか?」
光希の提案に、千代は驚く。普通、屋敷の者と女中が共に食事をとることはない。
「迷惑じゃなかったら、俺は千代さんと一緒に食べたいな」
「迷惑じゃないけど、いいのかしら?」
「いいって、いいって!義勇さん居ないし。居ても絶対怒んないよ!俺は、もっと千代さんとお話したい。……駄目?」
上目遣いで見上げる光希。今までの経験上、これで女を動かせなかったことはない。
「いいわよ」
千代が呆れたように笑いながらそういうと、「やった!」と喜ぶ光希。
自分の分は運びます、と部屋から出てついていく光希。止めても無駄とわかっているので、二人で台所へ向かう。
「あ、そっか。ここで食べればいいんだ」
「え?」
「わざわざ俺の部屋まで運ばなくてもさ。千代さんはいつもここで食べてるんでしょ?なら俺もここで一緒に食べる。運ぶ手間がなくなって楽ちんだ!ね?」
名案でしょ?と言わんばかりに笑う光希。いろいろ型破りなこの子に、何を言っても聞かないと判断した千代は「まあ、光希ちゃんがそれでいいなら」と承諾した。
光希は千代から義勇の言葉の読み解き方を教わったり、動物が嫌いなどの意外な一面を聞いた。光希も善逸達のことを話し、二人で大いに笑った。
帰ってきた義勇が驚く程に、光希と千代は仲良くなった。
休み中に書いた男子三人への手紙の最後には「俺に母ちゃんが出来ました」と書かれていた。
……母ちゃんかぁ、あいつがそう思うなんて、よっぽどその人に懐いたんだな。よかったな。
どんな人か知らないけど、光希を頼みます
手紙を読みながら、善逸は顔をほころばせた。