第58章 光
「冨岡、どう思う」
「これを知った時、……あいつはひどく錯乱した。怯えて震えていた」
「まあ、……そうなるかもしれないな。わからなくもない」
「とりあえず泣かせてみたら、少し落ち着いた」
「そうか」
「夜も泣いていて、おそらくほとんど寝ていない。朝、稽古をしたのだが、その時は元気だった。沢山笑っていたし、それが嘘の様な感じも無かった」
「鍛錬のように、光希が夢中になれるものを与えれば少しはマシになるということか」
「ああ。だが、それも一時的な物だ。不安定に変わりはない。現に今もしょぼくれている」
「そうだな。我々が忘れてはいけないのは、あの子はまだ子どもだということだ」
「……ああ」
「頭はいいが、情緒面ではまだまだ幼い」
「ああ」
「ここに我妻善逸を呼ぶか」
「……あいつは公私混同をしない。ここへ呼んでも遠ざける。帰宅させるしかない」
「そうだな。帰ると思うか?」
「難しい。だが、帰せないとしても、なんとかしなければ」
悲鳴嶼は隠を呼んで、善逸の動きを調べさせる。
「厳しいようだが、これは乗り越えてもらわないといけない」
「ああ」
「我妻に会わせれば回復出来ると思うか?竈門炭治郎の方がいいのだろうか」
「我妻を出して無理なら、他に手はない」
「そんなにか」
「炭治郎でも、今回は無理だろう」
「ふむ」
悲鳴嶼は腕組みをする。
義勇が考察を続ける。
「本によると、如月一族は短命のようだ。胃腸が弱く、熱を出し易い。その上怪しげな薬を飲み続けている。光希はさほど体が弱そうではないが、隠している可能性もある」
「少し様子を見ながら早めに手を打たねばな」
「一度、心労で死にかけている。あの時助けたのも、我妻だ」
「なるほどな。わかった」
義勇も退室する。
光希の様子を見に、部屋の前まで行く。
しばし部屋の前で佇む。
気配に気付いたのだろう、光希が扉を開けた。
「どうぞ」
部屋に入れてもらう。
光希は一般隊士用の隊服に着替えていた。