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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第57章 拾壱ノ型


部屋に残された二人。

「……本当におせっかいな子」

しのぶが、やれやれといった感じで言う。


「一度で運べるか」
「大丈夫ですよ」
「そうか」


「ちゃんと寝てるか。無理するな、胡蝶」
「聞こえません」

「………自分の身体を大事にしろ、…しのぶ。無理はしないでくれ」
「善処します」

義勇が、そっとしのぶを抱きしめる。
しのぶは微笑んで、嬉しそうに義勇の胸元へ寄り添う。

義勇がしのぶに口を寄せる。

「冨岡さん、紅が付きますよ」
「…………聞こえない」

「光希さんに気付かれますよ?…義勇さん」
「構わない。どうせあいつは、全部わかっている」

そう言うと、口を重ねる。


「本も二回に分けて持っていけばいい。……明日また取りに来い」
「私、忙しいのですよ…あなたと違って」
「俺は暇じゃない」
「ふふふ」

「会いたいんだ、もっと…しのぶ」
「寂しい思いをさせて、ごめんなさい」
「忙しいのは、わかっている。謝らせたいわけじゃない。すまない」
「わかってますよ」

「愛してる」
「私もです、義勇さん」


義勇がしのぶを強く抱きしめ、また口付けを交わす。こんな顔、こんな言葉、他の人が聞いたらひっくり返るだろう。

光希がくれた時間を精一杯堪能した後、しのぶは光希の部屋に来る。

採血が終わると光希が手を付いて頭を下げた。

「しのぶさん、申し訳ございません」
「何がです?」
「俺の、……祖先が。あなたも大切な人を沢山鬼に奪われています。謝って許されることではありませんが…、本当にごめんなさい」
「光希さんが悪いわけではありません」
「………はい」

光希は眉を寄せる。

「こんなに傷付きながら、薬の手がかりを見付けてきてくれてありがとうございます」
「しのぶさん……」
「有効に使わせていただきますね」
「はい。お願いします」

また深々と頭を下げる。


しのぶは本を背負って帰っていった。

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