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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第57章 拾壱ノ型


光希の拾壱ノ型は居合い切りなので、鞘付きの木刀を使う。

左に差していた鞘を抜き、右手に持ち変える。


「……いきます」
「来い」


完全に攻撃型で技を作った光希。
完全に防御型で技を作った義勇。

対照的な二つの拾壱ノ型が戦う。



前後に足を開き、力を込める。
低い前傾姿勢。善逸のものより深い。

光希の身体からドンと音がするほどの力が放出される。びりびりとした威圧感が義勇に向けられる。



「……水の呼吸、拾壱ノ型」


――――思い切りぶつけろ!!それが、俺に沢山の時間と情熱を注いでくれた、この人に対しての…最大の御礼だ!!!


「水流一閃!!!」


水の波紋を纏い、閃光の中、高速で義勇へと飛び込む光希。


申し分ない威力と速度。
だが、これなら凪で避けられる。我妻の霹靂一閃の方が速かった。

義勇がそう思った瞬間、光希の水流一閃が高速で曲がった。

「……っ!」

水のしなやかさを混ぜた光希の水流一閃は、変幻自在だ。速さは雷で、柔軟さは水。威力は二つを合わせて相乗効果を出す。


動きも威力も義勇の予想を遥かに上回った。

光希は居合い切りを放った後、霹靂一閃のように猛スピードで背面まで駆け抜けた。


ザッという音をたてて止まる光希。


義勇の右頬から一筋の血が流れる。
羽織も一部破れていた。


驚きで義勇の思考が一瞬止まる。

その後、最初に心が脳に伝えたのは、喜び。そして遅れて…少しの悔しさが伝わってきた。



「……本当に、よく頑張ったな」

義勇が、振り向く。
凪でも躱しきれない一撃を放った光希。

人に向けて放ったのが初めてだった光希は、義勇を見たまま呆然としている。

「あ、ありがとう、ございます」と実感がなさそうに答えた。



「あ、あの。義、勇さん、ほっぺた、血が」
「問題ない」

袖でごしっと血を拭う。

「だ、駄目です!ちゃんとした布で拭いてください!」

手拭いを持って駆け寄る。
我に返ったのだろう。怪我をさせたことに慌てている。

「なんてこった、顔は駄目だろ。せっかくきれいな顔してんのに」


光希が拭こうと手を伸ばしてくるので、慌てて布を奪い取って自分で傷を押さえる。

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