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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第57章 拾壱ノ型


二人は小休止で水を飲む。


「くそー!鍔迫り合いは勝てないとしても、生生流天の三発目を陸ノ型で止められてちゃ駄目だ!」
「回転力が足りない。もっと踏み込め。威力が上がる」
「はい!」

光希はすぐに立ち上がり、踏み込みを大きくして技を出していく。


休憩だというのに、すぐ練習を始めてしまう光希を、呆れ顔で見つめる義勇。変わらないな、と思う。


「………おい」
「あ、はい、すみません。つい」

気付いてすぐに座りに来る。
これも慣れたものだ。


「強くなったな」
「まだまだです。まだ勝てない…義勇さんに。一生勝てないのか、俺は」
「そんなことはない。お前が俺の歳になれば勝てる」
「二十一歳……」
「ああ。おそらく俺は今、肉体的に最盛期だ。対してお前はまだ子どもだ」
「そんなことは言い訳になりません。今、強くなきゃ……。今なんだ。先はどうでもいい」

光希は納得がいかないような顔で、座ったまま口を尖らせる。


「お前は強い」
「…………」
「今も強い。この先もだ」
「……なんの根拠があってそんな事を」
「俺がお前を育てた。それが根拠だ」
「…………」


「俺は、この世で一番強いんだろう?」


光希は驚いて義勇を見る。

『俺の先生は、この世でいっちばん強いんだ!』

……まさか、あんなのを覚えていたとは

かつて己が発した言葉を思い出す。



「そうでした」

光希は口元に笑みを浮かべる。


「俺、強いです。間違いないです。うん!すんごい剣士に教えてもらってたんでした。……強くなきゃいけない」

光希は立ち上がる。
義勇の正面に立ち、礼をとる。


「師匠。俺の拾壱ノ型、受けてください」


義勇も立ち上がる。

「全力で来い。遠慮はいらん」
「はい」


二人は山の中、距離を取って立つ。

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