第57章 拾壱ノ型
「少ししたら稽古、お願いします」
「わかった」
「山行きましょう!思いきり暴れたい気分です」
光希がはしゃぐ。義勇がこくりと頷く。
「出来たのか」
「ほぼ」
「初演習か」
「ええ。だから、凪と戦わせて欲しいです」
「承知した」
二人は水筒を持って山へ向かう。食後なので、歩いて行く。
「山でも沢山稽古付けてもらいましたねぇ。義勇さんめちゃめちゃ忙しかったのに。よく俺を連れ出す時間がありましたね」
「扉が壊れるからだ」
「あはは、俺、力加減出来なかったですからね。拾ノ型出すと絶対に扉がふっとぶんだ」
「……庭もあちこち壊された」
「あはは、すみません」
「破壊神だ」
「かっけえ!」
二人はいつも稽古をしていた場所に着き、水筒を置く。木がまばらで、少し拓けている。
光希は朝から身体を動かしているが、義勇はこれが一発目。それぞれの方法で、身体を動かしていく。
「かかってこい」
「はい!お願いします!」
光希は木刀を構え、すぐに打ち込みを始める。山に、カンカンと木刀が合わさる音が響く。
正確な打ち込みと太刀筋。威力も速さも格段に成長している。強くなってるのは想定内であったが、それを実感した義勇は驚きと嬉しさを覚える。
「いいぞ!」
光希の打ち込みを、珍しく褒めてくれる。
「もっと来い!技を出せ!」
「参ノ型、流流舞い!」
光希は自分が一番得意で、義勇と何度も共闘で使った技を出す。
義勇も思わず技を乗せそうになる。
だが、しっかり躱して、打ち潮で応戦してくる。
もう光希の技を弾くことは容易ではない。
光希も出された義勇の打ち潮を刀の腹で防ぎながら躱し、雫波紋突きで狙う。
二人の攻防が続く。
義勇も、全力で戦う。油断すると取られる。
光希の逆回りの生生流天。繰り返すことで威力が増す生生流天の三発目を義勇のねじれ渦で止められて、カァンと刀が当たり鍔迫り合いになる。
「……くっ…」
「力は、まだ弱いな」
義勇に簡単に押される。
すぐに跳び退いて離れるが、それを予想していた義勇に狙われ首元に木刀を突き付けられる。
「……、参りました」
光希は息を荒くして、悔しそうに刀を下ろす。