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雷鳴に耳を傾けて【鬼滅の刃】我妻善逸

第57章 拾壱ノ型


翌朝、ぼんやりと起きる光希。あまり寝られなかった。

ぷるぷると頭を振り、顔を洗って脳を起こす。


……駄目だ、こんなんじゃ。どうしたらいい

眉をひそめて、頬をぺしぺしと叩いた。
とりあえず稽古着に着替えて稽古場に行く。


床に座って瞑想をする。
深い呼吸を繰り返して心を静かに落ち着けていくと、心のもやもやも薄れていく。


ゆっくりと目を開く。

そのまま木刀を持って、一心不乱に素振りをする。何も考えないようにして、ひたすら振り続ける。


そこから水の呼吸の型を壱から順番に出していく。流れるように、基本をしっかりと抑えながら。
何度も何度も繰り返す。


……俺にはこれをやるしかない。前に行くしかないんだ。頑張れ。頑張れ


どれだけ考えないようにしても、動いているといろんな思いが心に浮かび始めてくる。

せめて自分を鼓舞できるような思考を前面に出して、卑屈になりそうな思考を奥へ押し込む。


光希は息が続く限り、がむしゃらに技を出し続けた。辛い、苦しい、痛い。腕が、足が、肺が、……心が、痛い。

不意に足が絡まり転ぶ。
地面に付いた手をぐっと握りしめる。呼吸が乱れている。必死に前向きな言葉を自分の中で繰り返す。



「朝から飛ばし過ぎだ」
「はぁっ、はぁっ、義勇さん!おはようございます」

義勇が稽古着で現れた。
光希は立ち上がって頭を下げる。


「久々に思いっ切り鍛錬出来るので、張り切っちゃって!」
「……この大嘘つきが」
「嬉しいのは本当ですから。中嘘つきくらいですよ。ははは」

「朝餉だ」
「はいっ!」


二人で義勇の部屋へ行く。
千代にも挨拶をして、朝食を食べる。


「寝てないだろう」
「少しは寝ましたよ。お布団暖かかった」
「添い寝が必要だったか」
「無理でしょ…諸事情で」
「………必要とあらば、やる」
「いえいえ、必要ないです。殺されます、あの方に。笑顔で毒をぶち込まれるんだ。怖っ」
「総司令官を殺す事はしないだろう」
「殺されるのはあなたです」
「……そうか」

光希は食後のお茶をすする。


「今は少し…キツいですが。心の整理が付けば大丈夫です。ご心配ありがとうございます」

そう言って力なく笑った。

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